贄と呼ばれた少女の、幸せ
少女は女を見送り、それもそうだな、とぼんやり思う。あんなにちゃんとした人が自分を手入れして、自分は何もしないのはおかしいことだとそう考えた。
(この部屋で、みんながすることは、ニエがしよう)
少女は投げつけられた雑巾を拾い、走り去った女がしていたように床を拭き始めた。雑巾をバケツの水につけ、水を絞っては床を拭く。
見様見真似で初めて行った床拭きは下手くそで、床はびしゃびしゃに濡れている。それでも少女は達成感を感じていた。生まれて初めて行った掃除は、なんだか少し自分をまっとうなものにしてくれる気がしたから。
この後はいつも、バケツと雑巾を持って女はどこかへ行くのだ。少女はそれも真似てみようと思い、初めて与えられた部屋を出た。