贄と呼ばれた少女の、幸せ


 朝起きて一番に、少女は昨日着ていた服を抱きしめて部屋を出る。できることが増えるかもしれないという期待は、少女の心を弾ませた。しばらく屋敷をさまよって、少女が見つけたのは、布を運ぶ女たちだった。

(あれは、おんなじかもしれない)

 少女はそう思い、後についていくことにした。ついていった先では、女たちが大きな布や何かをたらいでごしごしと洗っている。何をしているのか、どうすればいいのか聞いてみようかと思ったが、邪魔をすると殴られるのだと、少女はそう認識している。だから、何をしているのかをじっと見て覚えようと思った。

 女たちはたらいに水を張り、濡らした布に何か粉をかけてぎざぎざとした板の上で布を擦りつけている。擦り終わったらたらいの水を替え、布を何度か新しい水に泳がせてからぎゅうと絞り、ロープに引っ掛けていた。

 あれはできるかもしれない、と少女は思った。使われていない道具を手にし、女たちから少し離れたすみっこで、女たちを真似て自分の服を洗ってみる。洗い終え、服をロープに掛けようとしてみたが背が足らず、思い切って振り上げた服はぐしゃぐしゃに丸まってロープに絡んだ。少女は、丸まった服からぽたぽたと落ちる水滴を、ひとり黙ってしばらく見つめ続けた。

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