贄と呼ばれた少女の、幸せ


 その日から、少女はそこかしこでアニーの姿を見かけるようになった。いつも誰かと笑い合い、親しげに振る舞うアニーの明るい姿を。

 アニーはしばらくすると、少女の立ち位置を察するようになっていた。関わるなと強く言い含められているため、少女に話しかけることも、視線を送ることもしなかった。関わりを持つことで、少女に不都合をもたらすかもしれないと心配したからだ。

 それでもアニーは少女のために何かしたいと思っていて、それとなく様子をうかがっているうちに、少女がきちんと仕事を習ったことがないと気付く。アニーは少女が近くにいるときに、わざと習ったことを声に出して確認したり、他の使用人に教わろうとし始めた。

 それは、アニーが少女にできる精一杯の気遣いだった。そんな、細い糸を繋ぐような思いやりのおかげで、少女は見様見真似で行っていることの意味を知ることができた。少女の手際はそれまでと比べられないくらいよくなっていく。
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