贄と呼ばれた少女の、幸せ
それは、何日かに一度聞くことのできる些細で優しい言葉だった。少女はそれを聞く度に、心の中でこっそりとアニーに返事をする。
(そうだね)
まるで会話を交わしているようで、少女は胸に温かな気持ちを抱く。
アニーを中心に、使用人たちは自然と穏やかな交流を深めていった。少女は相変わらずその中に入れなかったし、目が合えば舌打ちをされるか、露骨に顔をしかめられた。少女に対する陰口もなくならなかったし、アニーもそれを庇い立てすることはできなかった。少女はそれを当然のことだと理解していた。下手に庇って、アニーの立場が悪くなる方がいやだと思っていた。
少女は時折交わすことのできるささやかな交流を、ただ楽しみにしていた。
そんなアニーが突然姿を消したのは、暑い暑い、夏の盛りのことだった。