贄と呼ばれた少女の、幸せ
「オイ! どこにいんのよ!」
果樹の間で微睡んでいると、夕暮れの中にオマエの声が響いた。
「ここにいるよ」
少女は慌てて果樹の間から這い出し、オマエにこたえる。
「くそ! あの客払い渋りやがって! お前がもっと大きければ稼がせるのに!!」
オマエは激高し、這い出てきた少女を怒鳴りつけ蹴りとばした。頭はだめだ、目がちかちかと光って気持ちが悪くなるから。お腹もだめだ、せっかく食べたものを吐き出してしまうから。
少女はそう思って地べたに丸まり、頭とお腹を守る。背中とおしりならがまんすれば大丈夫だと、そう考えて。
「いつ大きくなんのよ! こんなんじゃ一回売ったら壊れちまう! 何にもできなくて、面倒くさい!!」
オマエはただただ幼い少女に苛立ちをぶつけ、当たり散らした。ありったけの憂さを晴らすと、はん、と鼻を鳴らして家に入っていく。周りは、すっかり暗くなっていた。