贄と呼ばれた少女の、幸せ

「──ッあァ!!」

 突然横から殴られたような衝撃が襲い、少女の体は地面に投げ出された。体の上には、何か重いものが乗り上げている。

「あーあ。ほらお嬢さんが暴れるから、見られっちまったろ?」

 少女の上から下卑た男の声がした。

「どうすんだよ、ただの女だぞ、これ。なんでこんな所にいるんだ?」

「面倒だ。はやいとこ始末すればいい」

 茂みの奥には、もうひとりの男と、手を後ろで縛られた少女の姿が見えた。赤いドレスを着たその少女は、男の蛮行を止めようと体をねじって必死に(あらが)っている。

「やめて、やめなさい! その子を離して!」

「殺しちまっていいのかな、お仕着せ着てるぜ?」

「あそこの領主のところの使用人だろう。こんな仕事を持ってくる(やから)だ、逃げ出したくなることくらい起こるだろうさ」

「へっ違いないな」

 男たちは、まるで道端の石を蹴るような気軽な調子で少女の命について話し合う。

「やめなさい、その子は関係ないでしょう!?」

「お嬢さんが暴れたからこんなことになったんだろ? 諦めなって」

「違う、そんなつもりじゃなかった! 助けが来たかと思ったのよ!! 違うのよ、やめなさい、その子を離しなさい!!」
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