贄と呼ばれた少女の、幸せ
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「じゃあこの子はジルさんの所の子じゃないの?」
「ああ、うちの者ではない。巻き込まれたか、娘を攫った犯人の仲間か……君のおかげで娘は取り返せたが、この少女にも話を聞きたいところだな」
「お仕着せ着てるから、一緒に攫われたここの子かと思ったんだよ……ああ、よかった気がついたみたいだね」
少女が意識を取り戻すと、そこは少女がいた屋敷のものよりもよほど広い、立派なエントランスホールだった。
「気分はどう? 君は失神していたから、無理しないで。気持ち悪くないかい?」
少女に問いかけたのは、心配そうに少女の体を支える優しげな風貌の青年。正面には、『領主様』より上等な服を身に纏う、ジルと呼ばれた壮年の男が立っていた。
「あなたは、『おうさま』ですか……?」
少女は朦朧とした頭で、ジルにぽつりと問いかけた。