贄と呼ばれた少女の、幸せ
「俺が話を聞くよ」
少女に向かってかけられたのは、傍らでずっと少女の肩を支えていた青年の声だった。
「ヒースクリフ!!」
「ジルさんの話し方はひどい。こんな必死な子に、かわいそうだろ。それに、この子を放っておけるなら、俺は星を付けられていない」
ヒースクリフと呼ばれた青年は、ジルベルトの声を切って捨てる。
「大丈夫、落ち着いて話してごらん? 俺が君の話をぜんぶ聞くし、ぜったいに力になる」
少女を覗き込むヒースクリフの瞳は優しかった。体は頼もしく支えられている。『助けて』という言葉さえ知らない少女が必死に伸ばした誰かを求める手が、初めて握り返された。
その手は、何よりも温かく、力強かった。
ぽろぽろと目からこぼれる涙と共に、少女はわななく唇を必死に動かす。
「門を、門を開くって、もうすぐ『特別な材料』が届くって、メイド長も、アニーも、誰も、材料になんてされていいはずない……! りょうしゅさまをとめて、もう誰も『冥界の門』の材料にしないで……!!」
少女の悲痛な叫びはようやく音となり、エントランスホールに反響した。