贄と呼ばれた少女の、幸せ

「『冥界の門』だと……!? 馬鹿な、それは禁呪だ! 真実であればここら一帯が死の沼に沈むぞ!!」

 驚きに満ちたジルベルトの怒号がホールに響き渡る。『冥界の門』──それはありとあらゆる生命を喰らい尽くす禁呪。生きとし生けるものを、大地さえも、扉が開いている限り無尽蔵にすべて飲み込み、死の沼地を広げていくのだ。

 喰らった生命を対価に死者を蘇らせると言われているが、死者蘇生に成功したという前例は残されていない。ただ死を撒き散らし、大地を汚染する忌まわしき呪い──後に残されるのは、生命の芽生えを許さない黒くどろりとした沼地だけ。

 辺境伯令嬢の誘拐犯を放っておくつもりなどなかったが、少女がもたらした情報はさすがにジルベルトの予想範囲を大きく超えていた。
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