贄と呼ばれた少女の、幸せ
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「終わったよ」
翌々日の朝。ヒースクリフは『冥界の門』に片をつけてすぐ、ジルベルトに報告するため姿を現した。
「どうなった」
「門は開いてた。領主が開けたんだろ……それらしい男の一部が門の向こう側に倒れ込んでたよ。詳細は記録珠に収めてる。はい、これ」
記録珠は、映像、音声、日時情報、魔力の流れ……すべてを記録する球体の魔術具だ。ヒースクリフは証拠を取ってきた、とジルベルトに記録珠を手渡した。
「そこまで逼迫していたか……しかしこれがあるなら助かる。用意がいいな」
「貴族相手だから、まあ一応ね。屋敷を地下ごとぜんぶ吹き飛ばしちゃったし」
「生き残りは」
「ネビュラとライノが助けてまわったけど……何事もなくとはいかなかったよ。門が開いた直後に俺たちが着いたみたいだったけど、正気を取り戻せるかどうか」
事後処理を途中でライノに任せて先に帰ってきたが、屋敷にいた人たちのこれからを思うとヒースクリフの気は沈む。
「土地の方もね、沼地の発生までは進行してなかったけど、汚染されてる。規模はまあなんとか、屋敷の敷地内に収まったってとこかな……」
「そうか……彼女が知らせてくれたからそれで済んだと思うしかあるまい」
少女が事態を知らせなければ、被害は果てしなく広がったのだ。ふたりはやるせない思いに嘆息した。