贄と呼ばれた少女の、幸せ
「ジルさん、俺あの子をうちにつれて帰ろうと思うんだけど!」
ヒースクリフはジルベルトの姿を見つけるなり、開口一番にそう告げた。ジルベルトはしばらく黙り、思案してから頷く。
「それがいいだろう。君の家なら誰ひとり入れん」
「……俺もそう思ったんだけど」
もう絶対に保護しようと決意したものの、ジルベルトが考え込んでいる姿を見るうちにヒースクリフの胸に不安が湧き上がった。ヒースクリフはおずおずとジルベルトに問いかける。
「あんな不便なとこにつれ帰って、いいと思う……? いくらなんでも知らない男と一緒に暮らすのは、やっぱないかな……?」
でもなあ……とヒースクリフは悩み始めた。元々困っている人をどうしても放っておけない性分だ。そんなだから、気付いたら冒険者の最高ランク『金級』の、更に上の偉業を成したときにつけられる『金剛石』の星を四つもつけてしまったのだ。そんな彼が、あの状況の少女を放っておけるはずがない。
「しょうがないよなあ……他に場所思いつかないし、それが一番安全だし。保護するってことで、我慢してもらうしかないよなあ……」
「君が保護せねば、ここで怯えて暮らすか外で野垂れ死ぬか、あくどい者に良いように騙され利用されるだけだろう」
ジルベルトは恩のある少女を放り出すつもりなど毛頭なかったが、一度決めた後からうだうだと言い訳を始めたヒースクリフに決意させるため、わざと酷い選択肢をあげる。
「俺が保護する……ッ!!」
ジルベルトの想像通り、ヒースクリフは両手で顔を覆ってそう宣言した。
「それが一番だ。取り急ぎ必要そうな衣類などを用意しよう」
「頼むよ……」
なんとなく乗せられたな、と察しながらヒースクリフは指摘の言葉を飲み込んだ。