贄と呼ばれた少女の、幸せ
「もういいよ」
ヒースクリフの言葉に少女が目を開くと、そこは今までいた部屋とはうってかわって、草原と、咲き誇るたくさんの花と、遠くまで広がる森や湖に囲まれた、自然あふれる美しい場所だった。
「自然しかないんだ。きれいだけど、他に何もないし人もいなくて……んん……ごめんね……」
「いいえ……!」
美しい自然は少女の緊張を和らげ、呼吸を楽にした。そして、ヒースクリフがいて、他に誰もいないという状況も少女をとても安心させる。少女は、初めてすくい上げてくれたヒースクリフのことをまるで鳥の雛のように信頼していた。
「そうだ、ちゃんと名乗ってなかったよね。俺、ヒースクリフっていうんだ」
「ヒースクリフさま……?」
「ヒースでいいよ。かしこまられると、俺が緊張する」
ヒースクリフはへにゃりと笑う。
「わかり、ました。ヒース……さん」
「ははっじゃあそれで! ……君は? なんて呼べばいい?」