呪われた聖女は運命を覆したい

第四王子

私は今日、皇帝陛下と皇后陛下に謁見(えっけん)することになった。
アラン様に結婚を申し込まれてから4日後、皇帝陛下から皇宮に来るように命令された。
おそらくアラン様とのことと、私が青き血(ブルーランク)2位だったことが耳に入ったからなのだろう。
皇后陛下は大人しくて優しい方だった覚えがある。
だけど皇帝陛下は気難しい人で、最後までなにを考えているのかわからなかった。
過去にアラン様と婚約をして謁見したことがあるので、そのくらいは覚えている。
まあ、ほとんど喋らなかったけれどね。
その後馬車の揺れが止まり、皇宮に着いたことを意味した。
「スペネット様、お手をどうぞ」
従者の方が馬車のドアを開け、私をエスコートしようと手を差し出した。
私は微笑んでその手をとった。
「ありがとう」
私は馬車から降りた。
目の前に広がるのは、大きくて豪華な建物。
久しぶりに来たわね。
「申し訳ありませんが、私どもはこの後命を受けておりますので、おひとりで行くことになりますが…」
「ええ。大丈夫よ。ここまでご苦労様」
従者の方はそうして去っていった。
これは皇帝陛下の指示だとわかっている。
私を試しているの。
こんなふうに置いていかれては、普通の令嬢なら激怒する人もいるはず。
だから、私がそのような人なのか見極めているのだ。
「まさかここで、過去の情報が役に立つとはね」
過去にも同じ手を使われたもの。
そして私の言葉と同時に姿を現したのは、アミューズだった。
「よろしかったのですか?」
「ええ。いいのよ。それより、この先には神の遺物(アーティファクト)の所持者も多いことだし、姿を隠せるかしら?」
私が神の遺物(アーティファクト)の所持者であることは、誰にも知られてはいけない。
アミューズと喋っているところを見られれば、すぐにバレてしまうのでそれは避けたい。
アミューズはそれを察し、頷いてくれた。
「承知しました。では、この姿でどうでしょう」
彼が指を鳴らすと、途端に鳥に姿を変えた。
真っ白な体に羽に描かれたような青色のハートマークがとてもかわいらしい。
「そ、それでいいわ。そうね…なら、袖に隠れていていいわよ」
今日の薔薇色の真っ赤なドレスを着ていて、袖部分は広がっているため隠れられそうだった。
アミューズは私の提案に頷き、袖に入っていった。
肌に触れる羽毛がふわふわで、思わず触りたい衝動を抑えた。
「では、行きましょうか」
私は皇宮の道に足を踏み入れた。
ここをまっすぐ歩いていけば階段があるので、それを登って城内に入る。
簡単なはずだった。
だけど——。
歩き始めて数分、私の視界に金髪の方が入った。
その髪色からアラン様だと思ったが、どうやら違うみたいだ。
緑色の瞳に、口元のほくろが目にはいった。
見たことのない顔だった。
私が動きを止めると同時に、そこに立っていた人物が顔をあげた。
さすがに素通りは失礼だと思い、私は軽く礼をした。
すると、そのお方は私に近寄り靴を開いた。
「誰だ。来客か?そのような予定があるとは、聞かされていないが」
驚いてとっさに答えられなかったのは、大きなミスとなった。
ヒュッと音を立てて、私の首に剣を立てたのだ。
私は震える手をおさえながら言った。
「申し遅れました。私はこの国の第一聖女でありスペネット侯爵の次女、ムク・マリーウット・スペネットにございます。本日は両陛下に呼ばれ、謁見の予定がございます」
相手がどれほどの地位かわからない限り、無礼な態度は絶対に取れない。
それに、会って早々に首に剣を立てるなど常人ではない。
だけど私の予想に反して、彼はあっさりとひいた。
「ッチ。また俺は除け者か」
「え…?」
それだけ言って剣をしまい、去っていってしまった。
いったい、なんだったのだろう。
この時は全くわからなかった。
——だけど、この方の正体はすぐにわかることになる。
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