呪われた聖女は運命を覆したい
私が落ち着きを取り戻した頃、アラン様が口を開いた。
「単刀直入に聞きますが、本日の青き血(ブルーランク)調査の結果は不正ではないのですね?」
過去には聞いてこなかったことだ。
おそらく、王の次に強いランクを持つ私を見て慎重に動いているのだろう。
たしかに不正はしたが、ここで明かすわけがない。
私はにこっと笑って言った。
「とんでもありませんわ。神に誓って、不正などしておりません」
「そうですね。疑ってすみません」
——神に誓って。
それは、私たち聖女にとってはとても重い言葉だ。
なぜなら、その言葉を発するということは神を裏切らないことを意味するからだ。
つまり絶対的な意志。
その言葉を口にしたからこそ、アラン様も簡単に信じたのだろう。
「いえ。私も驚いていますから。疑ってしまうのは当然のことです」
そう言ってから、アラン様は無言になった。
そろそろかな。
私は話を切り出しさせるために言った。
「アラン様、ここは私専用の音質でございます。ですから、他の者に話を聞かれることはありません。他の者に申し上げにくいことでも、ここなら問題はありません」
過去と同じであれば、彼はあの話を切り出してくるはず。
そして、私の予想は当たった。
「配慮に感謝します。では、ムク様に申し上げたいことがあるのです。他言無用でお願いできますでしょうか」
私はコクリと頷いた。
「ありがとうございます。実は、ここ最近密売が盛んになってしまっているのです」
「まあ…怖いですわ。すでに対応中で?」
「はい。ですが、密売されているのは神の遺物(アーティファクト)なので、対応できる人数が限られているのです」
私は眉をひそめて怖がるフリをした。
白々しいわね。
それをしているのは、貴方でしょうに。
「そうなのですね。その者たちは、なにを企んでいるのでしょうか?」
「…実は、神の遺物(アーティファクト)を使って戦争を起こそうとしているようなのです」
「戦争…。それは、本当ですの?」
「はい。そこで、強い神の遺物(アーティファクト)を扱えるムク様にお願いがあるのです。どうか私たちと共に、それを止める手伝いをしていただけませんか?」
私は過去、この手にハメられてしまったのだ。
でも、今回では利用するのよ。
多くの情報をアラン様から得て、復讐を果たすのだ。
「詳細は把握致しました。ぜひ、私でよければお手伝いさせていただきたいです。民のため、そして国の繁栄のために。聖女として力を貸しましょう」
だから、騙されてあげる。
アラン様はそんな私の企みには気がつかず、嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます。では、計画の方は後ほど。それと、もうひとついいですか?」
「…は、はい」
頭にはてなマークを浮かべながらも、私が頷いた。
すると、アラン様が突然立ち上がり私の横に(ひざまず)いた。
それから左手を取り、手の甲にキスを落とした。
「突然のことですが、貴女に一目惚れしました。私と婚約していただけませんか?」
「えっ…?」
予想外すぎる展開に、思わずそんな声をもらしてしまった。
本来なら、今から2年経った15歳の時に婚約を申し込まれるはずだった。
その時私は完全にアラン様を信頼していたから、喜んで婚約を受けたのだ。
だから、信頼もなく出会って1日の今日、婚約を申し込まれるなんて思わなかった。
王の次のランクを持つ私を、どうしても手に入れたいと言うことだろうか。
慎重な彼らしくない行動だ。
「急すぎましたね。返事はまたの機会で大丈夫です。それでは、またお会いしましょう。我が光の聖女様、会えて光栄でした」
一度礼をした後、アラン様は温室を出ていった。
これほど過去が変わってしまうなんて、思いもしなかったけれど好都合ね。
全て利用するだけよ。
私はつい口角をあげてしまった。
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