呪われた聖女は運命を覆したい

手を組んで

その後私は殿下に客間まで連れてこられて、向かい合わせになるように座った。
それから、殿下が私に言う。

「早速だが、本題に入らせてほしい。貴女は、アランのなにを知ってる?」

私は一瞬ためらった。
外に人がいるような気配はなかった。
だけど、こんなこと誰かに聞かれてはまずいのだ。
殿下は私の考えを読み取ったように言った。

「ここには防音魔法がかけられている。部屋の外に声は漏れない。安心して話してくれ」

「…そういうことでしたら」

私は一度深呼吸をしてから言葉を発した。

「アラン様は裏で神の遺物(アーティファクト)の人体実験を行なっております。その理由はたったひとつ。この世界を全て自分のものにするため。そのためには神の遺物(アーティファクト)の化身の意思を乗っ取り、自由自在にたくさんのものを扱えるようにしたかった。ですから、このようなことを行なっているのです」

そう聞いて、殿下はなにかを考える素振りを見せた。
それから私のことを疑うような目を向けた。

「なぜ、そのようなことを知っているのです?」

私はハッとした。
疑うのは当然のことだ。
全く知られていないアラン様の悪行を私が知っているなど、疑わしいに決まっている。
だけど、殿下に言うわけにはいかない。
私がタロットカードを使って過去に戻ってきたことも、アラン様の婚約者であったことも。
裏切られる可能性だってある。

「…すまない」

私が黙っていたのが長かったからなのか、殿下はそんな声を漏らした。
まさか謝られると思っていなかったから。

「言いたくないこともあるだろう。無理に聞こうとして悪かった」

私が驚いて言葉を失っていると、いつの間にか服の中から出ていたアミューズが声をかけた。

『主様、反応しないで聞いてください。ここの者たちは神の遺物(アーティファクト)所持者ではないので、私の姿は見えておりません。ご安心ください』

後ろからそう語りかけてくる。
私は振り向こうとしたが、グッと抑えた。

『一度席を外し、タロットカードを使用してください。我々の計画には必ず協力者が必要です。この者が裏切ることがないのか、真意を確かめましょう』

そうよ、私にはその武器があるの。
使えるものは全て使わなくちゃ。

「いえ、大丈夫です。えっと…すみません、お手洗いを貸していただいてもよろしいでしょうか?」

「あ、ああ…」

タイミング的に不自然に思われたのだろう。
殿下は目を見開いて私を見つめている。
しかし、特になにも聞くことはなく頷いてくれた。

「では、私が案内致します」

ちょうど部屋に入ってきたエンシミオがそう言った。

「ええ、お願いするわ」

そう言うと、エンシミオが「ついてきてください」と言って部屋を出ていった。
それからお手洗いに案内してもらって、私は滑り込むように入った。
そして、瞬時にタロットカードを出現させる。

『主様、お使いになるカードは?』

ウェラ・メンス(真実の心)よ」

アミューズからカードを受け取り、発動させた。
カードが光り、消費されていく。

『お使いになるお相手は?』

「もちろん、セア・フローレンス・イリュシア第四王子殿下」

『それでは、使用します』

カッと先程よりも強い光を放って、カードが弾けた。
その瞬間、目の前に映像が流れた。

『アランの悪事を暴かなければ、民が危険に晒される。俺が皇帝になるより前に、あいつが戦争を始めてしまうかもしれない』

『セア様…どうしてそこまで必死になれるのですか?民は、貴方様を侮辱してきた存在。憎くは…ないのですか?』

殿下とエンシミオが話している時の映像のようだ。
これで彼の真実の心が見られる。

『憎くないわけがない。だが、俺のように苦しんでいる民がいる。それを許していいわけがない。俺はこの世界を変えたい。エンシミオ、そのためには最低でもひとりは仲間が必要だ。上位貴族は信用ならないかもしれないな。どうするか…』

そうして、映像は薄れていった。
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