婚約破棄の断罪裁判を開いた王太子、証言で全て自分の首を絞める【短編】

「何を騒いでいる」

 そのとき、重々しい声が響いた。
 その威厳のある声音に、貴族たちのお喋りがぴたりと止まる。

「父上!」

 にわかにエドゥアルトの顔がぱっと晴れた。彼の父――国王陛下のお出ましだ。
 国王は数人の側近と護衛を引き連れて、険しい表情で息子とその婚約者に視線を向けている。

「丁度いいところにいらっしゃいました、父上。これから、シャルロッテ(この女)を断罪するところなのです!」と、彼は自信満々に婚約者をびしっと指差す。

「断罪だと?」

「えぇ、そうです。シャルロッテはこのローゼ嬢に対して数々の嫌がらせをおこなっておりました。あの女の根性は性悪で、崇高なる王太子妃に相応しくない! ――これから、その証拠を父上にお見せしましょう」

 王太子が合図をすると、彼らのもとへ向かってぞろぞろと数人の人々がやって来た。

「あ……あなたたち!?」

 シャルロッテは目を見張る。そこに集った人々は、彼女と良好な関係を築いていた者ばかりだったのだ。

 いや、もしかすると、それはシャルロッテだけがそう思い込んでいただけなのかもしれない。彼らは一様に険しい表情を浮かべて、侯爵令嬢を見つめていた。
 信頼していた者たちの裏切りを知って、彼女は愕然と肩を落とす。

「……彼らも、ある意味でシャルロッテの被害者かもしれません」

 エドゥアルトは悲しそうに目を伏せてから、すぐにきりりと顔を上げて凛とした様相で言った。

「彼らは恐ろしい侯爵令嬢に怯えて、唯々諾々と従うばかりでした。しかし、今日は勇気を持って証言をしてくれるようです。シャルロッテの、数々の悪事を!」


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