婚約破棄の断罪裁判を開いた王太子、証言で全て自分の首を絞める【短編】
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一人目。
王宮の侍女が、おずおずと一歩前へ踏み出す。侯爵令嬢と目が合うとビクリと肩を震わせ縮こまった。
そんな彼女を、シャルロッテは複雑な表情で見つめている。
侍女は、シャルロッテが王宮へ足を運ぶたびに一番気遣ってくれた人物だ。
彼女は王太子との月例のお茶会は毎回と言っていいほどすっぽかされていた。
そんなとき、侍女が優しく声を掛けてくれて、待ちぼうけの侯爵令嬢とのとりとめのないお喋りに付き合ってくれた。
さすが王宮所属の侍女らしく、ドレスの流行や工芸品の最新技術などついて明るく、シャルロッテ好みのデザインの相談にもよく乗ってくれたのだった。
「シャルロッテは、ローゼを侮辱して泣かせたのだな?」
エドゥアルトが侍女に確認する。彼女は少しのあいだ躊躇する素振りを見せたが、やがて意を決したように口を開いた。
「はい……。たしかに侯爵令嬢は、男爵令嬢に『その浅ましい行為を直ちにお止めなさい』と厳しくおっしゃいました」
「具体的には?」と王太子。
「………『この盗人が! あなたは貧民街の乞食なのかしら?』と…………」
侯爵令嬢らしからぬ過激な発言に、貴族たちはざわついた。
シャルロッテは俯き、エドゥアルトは満足げに口の端を上げる。
「なぜ、令嬢はそのようなことを述べたのだ?」
一人冷静を保っている国王が静かに尋ねる。
「それは……男爵令嬢が王宮の備品を無断で持ち帰っていました」
侍女が答えると、会場は騒然となった。
彼女は話を続ける。
「男爵令嬢の盗癖には以前より悩まされておりました。我々が咎めても『どうせ補充されるでしょ?』と笑って、相手にしてくれませんでした。そこで、侯爵令嬢が強くおっしゃったのです」
無表情を保つ国王の眉が、ピクリと動いた。
「父上、これは侮辱です! 王宮の備品なんて使いたい放題なのに、なんて酷い言葉を投げかけるのでしょう!」
国王は数拍思考を巡らせたあと、
「次の証人を連れて来い」
続きを促した。
これを王太子は肯定をみなし、心の中でガッツポーズをした。