両思いでしたがタイムトリップして、敵国の王子と王女になりました!?
好きになっちゃったんだもん【side:ネネ】
――少し時間はさかのぼり。
レンが「パーティ」の事について書いた手紙を、私(ネネ)に渡した時のこと。
「じゃあネネ、いつもの通り、手紙を頼んだよ。ちゃんとロロに渡してね」
「……なんか、レンがすっごい嬉しそうに見える」
「え、そうかな」
顔に「照れくさい」と書いてある。
レンは上手く隠してるつもりだろうけど……でも、無駄だよ。
私は、レンの事なら何でも分かる。
だってレンは、私の好きな人だもん。
「どうして嬉しいの?」
「実はね、今度、国の創立記念のパーティがあるでしょ?
良い機会だから、ハート国も呼びませんか?ってお父様に提案してみたんだ。
そうしたら、なんと許してくれたんだよ!
わかる?
ミアが、このスター国に堂々と来られるチャンスを、やっと手に入れたんだ!」
「……ふぅん」
嬉しそうに目を細め、ひかえめにガッツポーズをするレン。
分かってる。
レンは「提案してみたんだ」なんて言ってるけど、本当は……。
ずっと前から考え計画したんだろうなって、簡単に分かる。
だって、あなたは、あの女――
ミアと会うために、今までたくさんの努力をしてきた人だもの。
お城の皆からも、国民からも。
「歴代の王子より、ずば抜けて秀才で腕がたつ王子だ」って。そんな噂をされるほど、あなたは今まで頑張ってきた。
全ては、あの女のために。
――私とレンが出会ったのは、今から少し前。
本の中で眠っていた私を、レンが起こしてくれた。封印を、解いてくれたんだ。
『ふわぁ~、あれ? あなた誰?』
『え、妖精?』
レンは、この国の王子様だった。
王子様、と言うには、本当に申し分ないほどカッコよくて、リーダーシップも抜群にあった。
また、レン自身も努力を重ねる人で、王子としての姿が、どんどん板についていった。
だけど、そんな、ある日。
私は、レンから、どんでもない事実を聞かされる。
『実は俺ね、中身が十歳なんだよ』
『じゅ、十歳……?』
『えっと小学四年生って、分かる?』
『消火器……?』
『ふふ、違うよ。小学生ね』
『?』
レンのいう事は、私にはちんぷんかんぷんだった。
転生?
小学生?
どういう事?って、何度も質問した。
それはもう、ウザいくらいに。
でも、レンは決して嫌な顔をしなかった。
私が理解できるまで、何度も何度も、丁寧にゆっくり説明してくれた。
『中身が十歳なんて、気が付かなかったよ……』
『うん。そんな話、ビックリするよね』
『そうじゃなくて……』
今までのレンの振る舞いが、二十歳の年齢にピッタリ過ぎたから。
幼いと思ったことが無かった。
子供?と疑う事さえ無かった。
だって、完璧だもん。
レンは、すごい王子様だもん。
『レンは、とってもカッコイイね』
『ありがとう。へへ、照れるな。
ネネも、いつもすごく可愛いよ』
『っ!』
ドキッ
一緒にいてしばらくして。
私はすぐ、レンに恋をした。
だけど――
「この手紙は、とっても大事だから。
頼んだよ」
「……」
「ネネ?」
今、レンの頭の中にあるのは、あの女のことばかり。
あの、ミアって子の事ばかり。
「最近、ミアって子の話ばかりだね」
「え、そうかな。ごめんね。
この前たまたま会えたのが、すごく嬉しくて」
また「へへ」と、はにかんで笑うレン。
王子様っぽくない、素の表情。
この表情を見られるのは、私だけの特権だって、そう思ってたのに。
『美亜!』
『え、連くん!?』
この間、再会した二人を見て思った。
私の入る隙は、少しもないって事に。
だって、顔を見れば分かるよ。
ミアの事しか考えてませんって、そう思ってるのが、レンを見ればすぐ分かるよ。
だから、だから気に食わないんだよ。
「ミアって子が、本当に好きなんだね? レンは」
「……うん、そうだね。
転生する前から、好きだったから」
「転生前の事は知らないけど……ミア、こっちの世界ではなんて呼ばれてるか知ってるでしょ?
バカ王女だとか、ふぬけ王女だとか。そんな子の、どこがいいの?」
レンに怒られるのを承知で、聞いてみた。
だけどレンは、全然怒る素振りを見せなくて……。
むしろ優しい瞳で、私を見つめた。
「確かに、少し前までのミアの評判は、良くなかったよ。
スター国の皆も”ハート国は落ち目だ”なんだって、散々に罵っていたからね」
「じゃあ、」
「でもね、ネネ。
今のミアを見て、どう思う?」
「え……」
「最近のミア、変わったと思わない?」
「……っ」
確かに、そうだ。
城内でも、ミアの話で持ち切りになった事さえある。
色んなレッスンをこなし、政治にまで口を挟めるようになってきた――メキメキと、頭角を現してきたミア。
流れる噂だって、悪いものから、一気に風向きが変わった。
「スター国が、ミアを”要注意人物”というまで、ミアは力をつけてきた。
それは、ミアの努力の賜物だと思うんだ。
そして、俺はね。ネネ。
逆境の中でも頑張り抜く、そんなミアに惹かれるんだよ」
「――」
瞬間、私の中で音が消えた。
レンの口は、まだ動いている。
だけど、何の声も聞こえない。
私の耳は、おかしくなったんだろうか?
だけど、私の異常が「レンへの拒否」だと気づいたのは、すぐの事だった。
聞きたくない。
レンがミアの話をするのを、聞きたくないんだ。
だって私、レンの事が好きなんだもん!
「手紙を届けに、行ってくるね……」
「あ、長々と話してごめんね。
うん、よろしくね。いつもありがとう」
「っ!」
ありがとう、なんて。言わないで。
心の中で、こんなにミアへの嫉妬心で醜くなっている私に、お礼なんて言わないでよ――
そんな事を思いながら、失恋した悲しさで泣きながら飛んだ。
手紙には、絶対に涙をつけないように、気を付けながら。
いっそ、涙でグチャグチャにして読ませまいかと思ったけど……。
それは、レンが悲しむからやめた。
レンは、頑張り屋だから。
私が、妖精としての力を使えると分かったら、すぐに「あの事」をしたくらいだから。
『ネネ、無理をさせたね。ごめんね』
あの時、そう言ったレンの顔を、今もよく覚えている。
だけど、あの顔も、やった事も……全部ぜんぶ、ミアのため。
私は、その手伝いをした。
レンとミアが無事に出会う、そんな悲しい手伝いを――
「う~レン、レン~っ!」
泣きながら飛んでいると、遠くの方から黒い塊が見えた。
距離が近づくにつれ、その黒が、ロロの髪だと気づく。
泣きながら飛んでいたから分からなかったけど、そうか。
もう、スター国とハート国の国境まで来たんだね。
「元気だったか? ネネ」
「ロロ……」
「ん?なんか目が赤くね?」
「っ!」
気づかれたら面倒な人に、気づかれそうになる。
私は慌てて、手紙をズイと差し出した。
「”今回の手紙には大事な事が書いてあるからね”って、レンが言ってたよ」
「え、大事な事? なんだよ」
「知らない」
「知らねーのかよ」
ガクッと、肩を下げるロロ。
だけど、すぐに顔を上げて、再び私の顔を見る。
「なぁ、やっぱり変じゃね? 何があったんだよ」
「~っ! だから!
なんでも、ないってば!」
ブンッと手を振ると、ロロが「あぶね!」と言いながら、紙一重で交わした。
チッ、運の良い奴。
「私、もう行くね!」
「あ、待てよネネ。
一つだけ、言いたい事があんだよ」
「……なに?」
すると、ロロは急に真剣な顔になった。
そして「覚えてるか?」と、私に尋ねる。
「どうして俺たちが存在するか、覚えてるか?」
「え……なに、どういうこと?」
分かっていなさそうな私に、ロロは眉にキュッとシワを寄せた。
その顔は、なんだか怒ってるようにも見えたし、悲しそうにも見えた。
「ねぇロロ、どういう事なの? 存在って?」
「なんでもねぇよ」
「ねぇ、気になるってば!」
私がロロの服を握ると、ロロが、その手をやんわりと解いた。
そして、
「レンの事は好きになるなって、そういう事だよ」
それだけ言った。
「え……な、なんで?」
いきなりの事で、頭がついていかない。
どうして、ロロがそんな事を言うの?
私がレンを好きだって、どうして知ってるの?
すると、私が何を言いたいか分かったかのように、ロロは口を開く。
「ネネは分かりやすいからな。
お前を見ていたら、誰を好きか……すぐ分かるっての」
「な! そんなこと……っ」
そんなこと、ある。
私は、レンが好きだもん。
でも、見込みはない。
だって、レンはミアが好きだから。
失恋したから、ここまで泣いて来たっていうのに……。
――レンの事は好きになるなって、そういう事だよ
どうして……。
どうしてロロにまで、そんな事を言われなきゃいけないの?
「ロロのバカ! 嫌い!
どうせロロだって、ミアの事が好きなくせに!」
「はぁ? なんでそうなるんだよ!」
「見てれば分かるよ!」
「お前は~!
やっぱ俺の事、なんも分かってねーよ!」
ロロは苛立ったように、頭をポリポリとかいた。
そして「バカ、嫌い……か」と。
深いため息をつく。
「お互い様だな」
「な、何が?」
「今、俺たちは、お互いを傷つけあってるって。そう言ってんだよ」
「……へ? もう、意味が分からない。
やっぱりロロ、嫌い」
ロロのいう事は、難しい。
全てを理解できるロロと違って、私は、全然なんだもん。
「意味が分からなくていいんだよ。
俺より、お前の方が後に生まれた。
だから、俺より知らない事がたくさんあっても、不思議じゃねーよ」
「え……」
私の方が、後に生まれた?
私、自分が生まれた時の事を何も知らないけど……ロロは、違うの?
ロロは何かを、知っているの?
だけど、ロロは、その質問に答えてはくれなかった。
回れ右をして「じゃあな」と、私から去って行く。
だけど、途中でピタリと止まって……
「気を付けて帰れよ。
送ってやれなくて悪いな」
と、柄にもなく、そんな事を言った。
「べ、別に。一人で帰れるもん!」
「はいはい」
そして、私たちは別れた。
お互いの胸に、わだかまりを残したまま。
そのわだかまりの正体は何か。
原因は、分からないまま。
だけど、私が失恋をしたって事実だけは、嫌なくらいハッキリしていて……。
私は泣きながら、お城までの道のりを帰っていく。
「あ~もう!
ウジウジしてる私は嫌い!
ロロも嫌い!」
空には雲が多くなり、一面に暗い影が落ちる。
そんな暗さに負けまいと、声を張り上げてみた。
だけど――
そこに、雷のような。
そんな凄まじい轟音にも似た「言葉」が、私の耳に届く。
「嫌い、ねぇ。
なら――
君が本当にしたい事は、なんですか?」
「え?」
突如あらわれた、謎の声。
その声に、私の羽はピタリと羽ばたきを止めたのだった。
レンが「パーティ」の事について書いた手紙を、私(ネネ)に渡した時のこと。
「じゃあネネ、いつもの通り、手紙を頼んだよ。ちゃんとロロに渡してね」
「……なんか、レンがすっごい嬉しそうに見える」
「え、そうかな」
顔に「照れくさい」と書いてある。
レンは上手く隠してるつもりだろうけど……でも、無駄だよ。
私は、レンの事なら何でも分かる。
だってレンは、私の好きな人だもん。
「どうして嬉しいの?」
「実はね、今度、国の創立記念のパーティがあるでしょ?
良い機会だから、ハート国も呼びませんか?ってお父様に提案してみたんだ。
そうしたら、なんと許してくれたんだよ!
わかる?
ミアが、このスター国に堂々と来られるチャンスを、やっと手に入れたんだ!」
「……ふぅん」
嬉しそうに目を細め、ひかえめにガッツポーズをするレン。
分かってる。
レンは「提案してみたんだ」なんて言ってるけど、本当は……。
ずっと前から考え計画したんだろうなって、簡単に分かる。
だって、あなたは、あの女――
ミアと会うために、今までたくさんの努力をしてきた人だもの。
お城の皆からも、国民からも。
「歴代の王子より、ずば抜けて秀才で腕がたつ王子だ」って。そんな噂をされるほど、あなたは今まで頑張ってきた。
全ては、あの女のために。
――私とレンが出会ったのは、今から少し前。
本の中で眠っていた私を、レンが起こしてくれた。封印を、解いてくれたんだ。
『ふわぁ~、あれ? あなた誰?』
『え、妖精?』
レンは、この国の王子様だった。
王子様、と言うには、本当に申し分ないほどカッコよくて、リーダーシップも抜群にあった。
また、レン自身も努力を重ねる人で、王子としての姿が、どんどん板についていった。
だけど、そんな、ある日。
私は、レンから、どんでもない事実を聞かされる。
『実は俺ね、中身が十歳なんだよ』
『じゅ、十歳……?』
『えっと小学四年生って、分かる?』
『消火器……?』
『ふふ、違うよ。小学生ね』
『?』
レンのいう事は、私にはちんぷんかんぷんだった。
転生?
小学生?
どういう事?って、何度も質問した。
それはもう、ウザいくらいに。
でも、レンは決して嫌な顔をしなかった。
私が理解できるまで、何度も何度も、丁寧にゆっくり説明してくれた。
『中身が十歳なんて、気が付かなかったよ……』
『うん。そんな話、ビックリするよね』
『そうじゃなくて……』
今までのレンの振る舞いが、二十歳の年齢にピッタリ過ぎたから。
幼いと思ったことが無かった。
子供?と疑う事さえ無かった。
だって、完璧だもん。
レンは、すごい王子様だもん。
『レンは、とってもカッコイイね』
『ありがとう。へへ、照れるな。
ネネも、いつもすごく可愛いよ』
『っ!』
ドキッ
一緒にいてしばらくして。
私はすぐ、レンに恋をした。
だけど――
「この手紙は、とっても大事だから。
頼んだよ」
「……」
「ネネ?」
今、レンの頭の中にあるのは、あの女のことばかり。
あの、ミアって子の事ばかり。
「最近、ミアって子の話ばかりだね」
「え、そうかな。ごめんね。
この前たまたま会えたのが、すごく嬉しくて」
また「へへ」と、はにかんで笑うレン。
王子様っぽくない、素の表情。
この表情を見られるのは、私だけの特権だって、そう思ってたのに。
『美亜!』
『え、連くん!?』
この間、再会した二人を見て思った。
私の入る隙は、少しもないって事に。
だって、顔を見れば分かるよ。
ミアの事しか考えてませんって、そう思ってるのが、レンを見ればすぐ分かるよ。
だから、だから気に食わないんだよ。
「ミアって子が、本当に好きなんだね? レンは」
「……うん、そうだね。
転生する前から、好きだったから」
「転生前の事は知らないけど……ミア、こっちの世界ではなんて呼ばれてるか知ってるでしょ?
バカ王女だとか、ふぬけ王女だとか。そんな子の、どこがいいの?」
レンに怒られるのを承知で、聞いてみた。
だけどレンは、全然怒る素振りを見せなくて……。
むしろ優しい瞳で、私を見つめた。
「確かに、少し前までのミアの評判は、良くなかったよ。
スター国の皆も”ハート国は落ち目だ”なんだって、散々に罵っていたからね」
「じゃあ、」
「でもね、ネネ。
今のミアを見て、どう思う?」
「え……」
「最近のミア、変わったと思わない?」
「……っ」
確かに、そうだ。
城内でも、ミアの話で持ち切りになった事さえある。
色んなレッスンをこなし、政治にまで口を挟めるようになってきた――メキメキと、頭角を現してきたミア。
流れる噂だって、悪いものから、一気に風向きが変わった。
「スター国が、ミアを”要注意人物”というまで、ミアは力をつけてきた。
それは、ミアの努力の賜物だと思うんだ。
そして、俺はね。ネネ。
逆境の中でも頑張り抜く、そんなミアに惹かれるんだよ」
「――」
瞬間、私の中で音が消えた。
レンの口は、まだ動いている。
だけど、何の声も聞こえない。
私の耳は、おかしくなったんだろうか?
だけど、私の異常が「レンへの拒否」だと気づいたのは、すぐの事だった。
聞きたくない。
レンがミアの話をするのを、聞きたくないんだ。
だって私、レンの事が好きなんだもん!
「手紙を届けに、行ってくるね……」
「あ、長々と話してごめんね。
うん、よろしくね。いつもありがとう」
「っ!」
ありがとう、なんて。言わないで。
心の中で、こんなにミアへの嫉妬心で醜くなっている私に、お礼なんて言わないでよ――
そんな事を思いながら、失恋した悲しさで泣きながら飛んだ。
手紙には、絶対に涙をつけないように、気を付けながら。
いっそ、涙でグチャグチャにして読ませまいかと思ったけど……。
それは、レンが悲しむからやめた。
レンは、頑張り屋だから。
私が、妖精としての力を使えると分かったら、すぐに「あの事」をしたくらいだから。
『ネネ、無理をさせたね。ごめんね』
あの時、そう言ったレンの顔を、今もよく覚えている。
だけど、あの顔も、やった事も……全部ぜんぶ、ミアのため。
私は、その手伝いをした。
レンとミアが無事に出会う、そんな悲しい手伝いを――
「う~レン、レン~っ!」
泣きながら飛んでいると、遠くの方から黒い塊が見えた。
距離が近づくにつれ、その黒が、ロロの髪だと気づく。
泣きながら飛んでいたから分からなかったけど、そうか。
もう、スター国とハート国の国境まで来たんだね。
「元気だったか? ネネ」
「ロロ……」
「ん?なんか目が赤くね?」
「っ!」
気づかれたら面倒な人に、気づかれそうになる。
私は慌てて、手紙をズイと差し出した。
「”今回の手紙には大事な事が書いてあるからね”って、レンが言ってたよ」
「え、大事な事? なんだよ」
「知らない」
「知らねーのかよ」
ガクッと、肩を下げるロロ。
だけど、すぐに顔を上げて、再び私の顔を見る。
「なぁ、やっぱり変じゃね? 何があったんだよ」
「~っ! だから!
なんでも、ないってば!」
ブンッと手を振ると、ロロが「あぶね!」と言いながら、紙一重で交わした。
チッ、運の良い奴。
「私、もう行くね!」
「あ、待てよネネ。
一つだけ、言いたい事があんだよ」
「……なに?」
すると、ロロは急に真剣な顔になった。
そして「覚えてるか?」と、私に尋ねる。
「どうして俺たちが存在するか、覚えてるか?」
「え……なに、どういうこと?」
分かっていなさそうな私に、ロロは眉にキュッとシワを寄せた。
その顔は、なんだか怒ってるようにも見えたし、悲しそうにも見えた。
「ねぇロロ、どういう事なの? 存在って?」
「なんでもねぇよ」
「ねぇ、気になるってば!」
私がロロの服を握ると、ロロが、その手をやんわりと解いた。
そして、
「レンの事は好きになるなって、そういう事だよ」
それだけ言った。
「え……な、なんで?」
いきなりの事で、頭がついていかない。
どうして、ロロがそんな事を言うの?
私がレンを好きだって、どうして知ってるの?
すると、私が何を言いたいか分かったかのように、ロロは口を開く。
「ネネは分かりやすいからな。
お前を見ていたら、誰を好きか……すぐ分かるっての」
「な! そんなこと……っ」
そんなこと、ある。
私は、レンが好きだもん。
でも、見込みはない。
だって、レンはミアが好きだから。
失恋したから、ここまで泣いて来たっていうのに……。
――レンの事は好きになるなって、そういう事だよ
どうして……。
どうしてロロにまで、そんな事を言われなきゃいけないの?
「ロロのバカ! 嫌い!
どうせロロだって、ミアの事が好きなくせに!」
「はぁ? なんでそうなるんだよ!」
「見てれば分かるよ!」
「お前は~!
やっぱ俺の事、なんも分かってねーよ!」
ロロは苛立ったように、頭をポリポリとかいた。
そして「バカ、嫌い……か」と。
深いため息をつく。
「お互い様だな」
「な、何が?」
「今、俺たちは、お互いを傷つけあってるって。そう言ってんだよ」
「……へ? もう、意味が分からない。
やっぱりロロ、嫌い」
ロロのいう事は、難しい。
全てを理解できるロロと違って、私は、全然なんだもん。
「意味が分からなくていいんだよ。
俺より、お前の方が後に生まれた。
だから、俺より知らない事がたくさんあっても、不思議じゃねーよ」
「え……」
私の方が、後に生まれた?
私、自分が生まれた時の事を何も知らないけど……ロロは、違うの?
ロロは何かを、知っているの?
だけど、ロロは、その質問に答えてはくれなかった。
回れ右をして「じゃあな」と、私から去って行く。
だけど、途中でピタリと止まって……
「気を付けて帰れよ。
送ってやれなくて悪いな」
と、柄にもなく、そんな事を言った。
「べ、別に。一人で帰れるもん!」
「はいはい」
そして、私たちは別れた。
お互いの胸に、わだかまりを残したまま。
そのわだかまりの正体は何か。
原因は、分からないまま。
だけど、私が失恋をしたって事実だけは、嫌なくらいハッキリしていて……。
私は泣きながら、お城までの道のりを帰っていく。
「あ~もう!
ウジウジしてる私は嫌い!
ロロも嫌い!」
空には雲が多くなり、一面に暗い影が落ちる。
そんな暗さに負けまいと、声を張り上げてみた。
だけど――
そこに、雷のような。
そんな凄まじい轟音にも似た「言葉」が、私の耳に届く。
「嫌い、ねぇ。
なら――
君が本当にしたい事は、なんですか?」
「え?」
突如あらわれた、謎の声。
その声に、私の羽はピタリと羽ばたきを止めたのだった。