両思いでしたがタイムトリップして、敵国の王子と王女になりました!?
いよいよ真実!
「俺やネネという妖精を作った人物。
 それは、誰かって言うと……

 ダイア国の王様だ」

 その事実を知らなかったらしいネネちゃんは「え」と、驚きで涙が引っ込んでいた。

「私と、ロロが“作られた”……?」
「そうだ。ネネは知らないかもしれないが、妖精ってのは人の手で作られ、そして生まれたんだ」
「そんな……」

 これには、私も連くんも驚きを隠せない。
 しかも、滅多に聞かない国名も出て来たし。

「ねぇロロ。
 ダイア国って、確か……」
「昔スター国と戦争をした国だよ。ダイア国は負けて、現在は解体されている。亡国だ。
 だけど……王様がいる?
 それに、こっそり隠れて妖精を作ってる?
 すべて……初耳だよ」

 連くんの眉が、キュッと険しい角度に吊り上がる。
 それは同級生の連くんではなくて、王子としての顔だった。

「わ、私もダイア国については勉強した。
 確か、ダイア国の土地は、今スター国が所有権を得ているっていう」
「そうだよ。戦争をして勝ったスター国が、国の解体と国土のはく奪を、ダイア国に要求したんだ。
 だけど……それは、もう百年も前の話だよ。
 今となっては、ダイア国の人はスター国の一部となって、上手く共存している。
 平和なんだよ」

「平和、か」

 ロロは、クッキーを摘まんだ。
 柔らかいクッキーは、少しの力でホロホロ崩れて、お皿の上に散らばっていく。

「今、この世の中にある平和って言うのは、このクッキーみたいなもんだ」

 ロロのいう事に、みんなが首を傾げる。
 ネネちゃんも。

「ねぇロロ、知っている事があれば、全て教えて。
 私、自分がどうして生まれたか……ちゃんと知りたいよ」
「ネネ、それは本当か?」

 迷いなくコクリと頷くネネちゃんに、ロロは一瞬、悲しい顔をした。
 そして――

「もし、悲しい事実があったとしても……。
 それでも知りたいか?」
「え……」

 少しの迷いを見せたネネちゃん。
 だけど、その後コクリと頷く。

「知りたいよ。私、全てを聞く覚悟がある」
「じゃあ、話す。
 ミアもレンも、よく聞いてほしい」

 そして、ロロから真相を聞かされる。
 それは、私たちが思っていた以上に――
 恐ろしく、そしておぞましいものだった。

「ダイア国の王様は、戦争直後に亡くなった。
 だけど、子孫はずっと受け継がれていてる。
 今も、王様の子孫は辺境の地で、たった一人で生きている。
 そして――

 全ての国を支配しようと、計画しているんだ」

「え!?」
「支配? どういうこと?」

 連くんの質問には答えず、ロロは続ける。

「王様の子孫――その名を、ソフィアという。
 ソフィアは、俺たち妖精を作った。
 それは、どうしてだと思う?
 どうして俺はハート国のミアと出会い、
 どうしてネネは、スター国のレンと出会ったと思う?」

「え……」
「ま、まさか!」

 私も、そして連くんも顔を青くする。
 そんな私たちを見て、ロロはコクリと頷いた。

「そう。ソフィアは、俺たち妖精を各国へ送り込んで、有益な情報を得ようとした。
 言わば――スパイだ。
 俺たち妖精は、スパイをするために作られたんだ」
「そ、そんな……」

 ネネちゃんが、飛ぶことも忘れて、私の膝にひらりと落ちる。
 そんなネネちゃんを見て、ロロは顔を歪めた。

「だから言ったろ、ネネ。
 お前は聞かない方がいい。
 レンの事を好きなネネが、
 そのレンを裏切るために、
 自分が作られたなんて……」
「もうやめて!
 やめてよ、ロロ!」
「……悪い」

 ネネちゃんが、耳を塞ぎ、目を瞑る。
 全身で、ロロを話を拒絶していた。
 だけどロロは「悪いな」と言って、話を続けた。

「ここまで話したら、もう最後まで話す。
 聞くのが嫌なら、外に出てろ。
 俺はミアとレンに、まだ話さないといけない事がある」
「う~……っ」

「ネネちゃん……。ここに、おいで?」
「ミア……」

 フラフラ飛ぶネネちゃんを、私の手の中に包みこむ。ドーム型に覆って、なるべく音が入らないようにした。

「たくさん泣いて疲れたよね。
 でも、大丈夫だよ。
 今までたくさん力を貸してくれた分、今度は私がネネちゃんを守るからね!」
「み、ミア……っ」

 ネネちゃんは、コクリと小さく頷いて、私の手の中で丸まった。
 まるで、叱られた子供みたいな恰好で……。
 その姿に、思わず胸が切なくなる。

「じゃあ、続きを聞こうか」
「……分かった」

 見えなくなる瞬間まで、ネネちゃんを見ていたロロ。
 罰の悪そうな顔をして、私たちに向かい合う。

「俺は、一番初めに生まれた妖精だ。
 だから、ソフィアから色々聞いていた。
 だからハート国で目が覚めた時……
 ミアには悪いが、”来ちまったんだな”って思った。
 ソフィアは本当に、俺をスパイとして使う気なんだって」
「ロロ……」

「俺は、はなからお前らの国を裏切るために生まれたんだ。
 俺がミアと出会ったのは、仕組まれた事だったんだ。
 もちろん、
 ネネがレンと出会ったのも、偶然なんかじゃない。
 全ては、ソフィアに操作された事だ」
「まさか、ダイア国がね……」

 俯いていた連くんは「でも」と、顔を上げる。

「ネネもロロも、いつソフィアに情報を渡していたの?
 思い出す限り、ネネはいつも俺にベッタリだった気がするけど……」
「ネネは、自分がスパイって事を知らなかったからな。
 ソフィアが”謎の声”として現れることで、上手くネネを操作するつもりだったんだろ」
「そんな、ひどい……!」

 怒りに震える私。
 そんな私の手の中で、ネネちゃんが震えているのが分かる。
 たまに「ごめんなさい」って声さえも聞こえる。
 その声を聞いて、私は、なんだか……
 怒りが抑えきれなくなった。

「ねぇロロ。
 ソフィアって奴、どこにいるの?」
「それは……分からない。
 俺たちがつくられた場所は知ってるけど、ソフィアは変装がうまいし、どこにでも姿を見せる。反対に、どこにでも隠れるんだ」
「うぅ……」

 会ったら文句を言ってやろうと思ったのに!
 チッと舌打ちしそうな私の顔を見て、連くんが「そうだね」と頷く。

「ひとまず、ソフィアって人を調査しないといけないかな。
 といっても、本人の姿がないし、ロロの話の証拠が何もない。
 ネネが眠っていた本は、いつの間にか消えていた。きっとロロの本もだろうね。
 だから、次に事が起きたら本格的に調査……って事になるけど」
「まぁ、そうなるな」

 ロロが頷く。
 そんなロロを、連くんはじっと見つめた。

「……なんだよ、見るなよ」
「ネネはスパイの事を知らなかったから、スター国の情報をソフィアに渡してないって分かるけど……。
 君は?」
「あ?」

「君の無実は、どうやって証明するの?」
「俺は……」

 ロロは連くんを見るではなく……
 グッと下唇を噛みながら、私を見た。
< 22 / 29 >

この作品をシェア

pagetop