両思いでしたがタイムトリップして、敵国の王子と王女になりました!?
会えた【side:ロロ】
「いってらっしゃい、ロロ!」

 そう言われてハート国を飛び立って、三日。
 俺の背中には、ミアの書いた手紙が乗っていた。

『おい、ミア。まさか、そのぶ厚い手紙を、俺に持って行かせる気じゃないよな?』
『え、まだ便せん十枚だよ?』
『重くて俺が潰れるわ!!』

 するとミアは俺の体の小ささを再認識したらしく「ごめんね!」と書き直していた。
 結果、便せん一枚。

「別に、もっと書いても良かったのに」

 ミアは抜けてる所あるし、頼りないし、まだまだ王女としては力不足だ。
 だけど、十歳という幼さだからか――ミアには、底知れない「優しさ」がある。

「子供ながらの、純粋さって感じだな」

 優しいだけじゃ王女は務まらない。
 だけど、

 ――そりゃ一生懸命に書いた手紙だから、連くんに読んでほしいよ。だけど……ロロに何かあってまで、届けてほしくない

 ――無理そうだったら、絶対に引き返してきて。いい?ロロ、約束だよ!

 こんな底なしの優しさを持つ王女がいても、俺はいいと思うんだ。

「いや、俺がミアに甘いだけなのか?」

 悩みながら、飛び続ける。
 すると、やっと大きな星を掲げた白が見えて来た。
 スター国の城だ。

「さてと、あとは人に見つからないように王子の所へいくだけ……、ん?」

 その時、俺の目の前を横切る「何か」が目に留まる。
 だけど俺は、その「何か」の正体が分かっても、にわかには信じがたかった。
 なぜなら――

「え、ちょ、ま……。ネネ!!」

 俺に「ネネ」と呼ばれた「何か」は、ピタリと止まった。
 空中で浮かんだまま止まれるのは、俺と同じく羽が生えているから。
 俺と同じ、蝶々の形をした透明な羽。

「え、ロロ?」
「ネネ、お前……、無事だったのか」

 そうか、良かった――と言いながら、俺はネネに近寄り抱きしめる。
 するとネネも、俺の背中に手を回して「ロロ」と顔を押し付けて来た。

「久しぶりだね、ロロ!」
「ネネ、無事だったのか。良かった」

 実はネネは、俺と一緒に本に封印されていた妖精だ。
 目覚めた俺が、ミアに言った、

 ――俺の他に、もう一人、妖精がいなかったか?

 そのもう一人というのはネネのことだった、というわけだ。

「元気だったか? いつ目が覚めたんだ?」
「少し前だよ! ロロこそ、元気そうで安心した。まさか同じスター国にいたなんて!」

「あ、えっと……。そうじゃないんだ」
「え?」

 お姫様みたいなピンクのドレスを着て、髪の毛も金髪ロールになっているネネ。
 俺を見て、コテンと頭を倒した。

「俺、実はハート国にいてさ……」
「は、はは、ハート国ぅ!?」

 スター国とハート国の仲の悪さを、どうやらネネも知っているらしい。
 険しい顔をした後「あのさ」と。
 ある事を、俺に提案した。

「ちょっと、ついてきてほしいの!
 ロロ、私と一緒に来て!」
「へ? でも一体どこに、」

「私がお世話になってる人の所だよ。
 来れば分かるから!」
「お、おぉ」

 そう言って、ネネは俺の手を引いて先を飛ぶ。
 ただそれだけの事なのに、俺は熱が出たみたいに、体が熱くなっていった。

「おわ! おい、手! 手!!」
「ん? どうしたの?」
「な、なんでもねぇよ……!」

 さっきハグしたけど、それはそれ。これはこれだ。
 急に手を握られるとドキドキするのって、もしかして、俺だけかよ?
 そんなことを思っていると、ネネは俺と繋ぐ手に、力を込めた。

 ギュッ

「ロロ、どうしたの?」
「あぁ、もう!
 手ぇ……、今だけだからな」
「さあ、しゅっぱーつ!」

 ネネに引かれて、飛んで行く俺。
 そんな俺の目に写ったのは、スター国の城の最上部。
 その部屋の窓から、ネネはスルリと入り込んだ。
 そして、こう叫んだ。

「レンー! お客さんだよー!」
「え、レン……!?」

 今、レンって言ったか!?
 レンって、ミアがいう「あのレン」か!?

「レンー? いないのぉ?」
「ここだよ」
「あ、レン!」

 ネネの見つめる先。
 そこには、

「やぁネネ。おかえり」

 星の大きなバッジを胸につけた、男の人。
 通称、スター国の王子。
 レンと呼ばれる、その人物。

「そして初めまして。
 ネネと同じ、妖精さん」
「……ッ」

 見た目が二十歳のレンが、俺に微笑みかけていた。

 ◇

「それで。
 君はどこから、何の用事で来たの?」
「えっと……」

 レンの部屋に来て、すぐのこと。
「座りなよ」と金髪に近い茶色の髪を揺らして、レンは俺にそう言った。
 座りなよ、と言われてもな。
 一体、どこに座れば――
 そう思っていると、ネネが「こっちー」と妖精サイズの机と椅子がある場所まで、俺の手を引いてくれた。

「わあ!? また手!」

 また許可なく俺と手を繋ぎやがって!と怒りたかったけど、それどころじゃない。
 だって、目の前にいるレンって奴。

 なんか、すっげー怖いんだもん!!

 ニコニコしてはいるものの、心の中では、何を考えているか分からないタイプだ。
 とりあえず……当たり障りのない話をするか。

「ネネが、迷惑かけてないか?」
「まるで親みたいな事を言うんだね、君は」

「まぁ、ずっと一緒にいたし」
「ふぅん、そう」

 するとレンは、少しだけ表情を緩めた。
 そして「懐かしいなぁ」と。
 俺とネネを、交互に見る。

「俺にもね、いたんだよ。
 ずっと一緒にいた人。
 大切で、大事な人がね」
「え、それって”ミア”?」
「!!」

 ミア――その名前を口にすると、レンは座っていた体を、ガタリと音を立てて起こした。
 そして可能な限り、ズンズン俺に近づく。

「なんで美亜の事を知ってるの!?」
「なんでって……。
 俺が今、ミアと一緒に住んでるからだ」
「え!?」

 めいいっぱい俺に近づいていたレンは、今度、すごい勢いで遠ざかった。

「い、一緒に!?
 でも、君は男の子でしょ!?」
「いや、女のネネと一緒に住んでるヤツに、そんなコト言われたかねーよ」
「そ、そうだけどさ!」

 レンはクールなタイプに見えるのに、意外にウブな反応をするんだな。
 こんなに大人っぽくて、カッコイイのに。
 中身は、まるで子供みたいだ。

 ……ん?

 そこで、俺の中で、とある予想が生まれる。
 だって見た目と中身が違うギャップは、既にミアで経験済みだからな。
 もしかして、目の前のレンも――?

「なぁ、聞いてもいいか?」
「どうぞ?」

「レンの中身も、十歳なのか?」
「! どうして、それを?」

「ミアが言ってたからな」
「……そう、美亜が」

 その時のレンは、なぜかすごく泣きそうだった。
 だけど、口元には笑みが浮かんでいて。複雑な顔だ。

「君が、その事を知ってるって事は、ミアも俺と同じ”十歳”なんだね?」
「そうだ。レンも十歳に違いないって、ミアが言ってたぞ」

 するとレンは、穏やかに笑った。

「うん、同じだよ。
 俺も、見た目は二十歳。
 だけど中身は、小学生の十歳だ」
「本当に、そんな事がありえるんだな……」

「ビックリだよね」と、レンが頬をかく。
だけど、その後すぐに表情が変わった。

「それで――
君が俺の所へ来た理由は、その背中にある手紙の事かな?」
「あ、そうそう。忘れてたぜ」

 ネネが「美味しい~」と言いながら、机の上にあるクッキーを食べている。
いいなぁ。俺も、後で絶対もらうからな。

「ミアが、レン宛に書いた手紙だ」
「ハート国の王女として、じゃなくて。
小学生の美亜からの手紙だね?」
「そうだ」

 手紙を渡す。するとレンは、受け取った瞬間、フッと笑みを浮かべた。

「嬉しいな。ありがとう。
俺と美亜がコンタクトをとれるのは、もう少し先だと思ってたから」
「? どういう、」

 質問しかけた、その時だった。
「ロロ―!!」と、ネネがクッキーを片手に俺に突進してくる。

「ロロも一緒に食べようよ!
 ねぇレン、いいでしょ?」
「もちろん。
そうだ。俺も、これからはロロって呼ぶね」
「あぁ」

 そして、俺とネネはクッキーを食べる。
 そんな俺たちには目もくれず、レンはミアからの手紙を読み進めていた。
 そして視線が下へ行けばいくほど……
 その顔は、ほんのり赤色に色づいていた。
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