ただ君を愛したいだけ
偶然の再会
百花が花開き、ほのかな甘い香りが鼻をくすぐる三月下旬の金曜日。

下町の商店街にあるスーパーで艶々(つやつや)のいちごを奮発して購入した私、及川(おいかわ)瑞葉は、小さな手を引いて歩きだした。

私を見上げてにっこり笑う娘の陽菜(ひな)は、おしゃべりが得意なおませさん。

保育園の三歳児クラスでは、一番誕生日が遅いのにしっかり者だと評判だ。


「いちご、おいちい?」
「きっとおいしいよ。店員さんもそう言ってたでしょう?」


実は先週の誕生日にショートケーキを食べたのだが、最後まで取っておいたいちごを落としてしまい、いちご好きの彼女は盛大にへこんだのだ。

泣きそうな顔をしたもののぐっとこらえ、『ママのあげるよ』と申し出ても首を横に振り……自分が落としたのだからと我慢した。

ちょっぴり頑固なところは、パパに似ている。


ただ、三歳にしては物わかりがよすぎるのは少し心配だ。

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