ただ君を愛したいだけ
「だから、俺から離れないでくれ」
「はい。離れません」


どちらからともなく重なった唇は次第に熱を帯びてきて、呼吸が乱れた。


「愛してる、瑞葉」


彼の心からの叫びが胸に届き、鼻の奥がツンとする。


「私も、愛してます。智治さんだけを……んっ」


荒々しくつながった唇から、彼の強い感情があふれ出ているのが見えるかのようだ。

彼の背に手を回して強く引き寄せると、彼もまた抱きしめてくれる。

ずっとこうしていたい。
ずっと一緒に生きていく。


「瑞葉」


そこはかとない色香を纏(まと)った彼の唇が、私の名前の形を作る。


「はい」
「俺に出会ってくれてありがとう」
「智治さん……」


彼は満ちた心からこぼれた私の涙をそっと拭って、優しく微笑んだ。

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