月が青く染まる夜に
迅和くんはスクリーンを見上げる。
青い画面を一瞥。

「No Signalか…」

落ち着きすぎて、ずるい。
私のこの慌てっぷりとの違いといったら。

「ちょっと見てもいいかな」

どうぞ、とすぐに場所を譲る。


さっきまで私が触っていたキーボードに、彼の手が重なる。
キーの端に、私の指先の余熱が残っている気がして、息が詰まる。

距離が近い。
画面を見ているはずなのに、視界の端に彼の横顔。

彼の指が動くたび、キーが小さく鳴る。
その音がやけに大きく聞こえる。

一瞬、私の小指に触れそうになって、でも触れない。
彼の指先が、ほんのわずかに浮いてから、別のキーへ移動する。

────まるで、触れないように選んでいるみたいに。


やめて、そうじゃない、今は仕事。
考えてるのは、自分だけ。

「入力はHDMI1か」

「うん、変えたけどダメだった」

彼はリモコンを操作して、パソコンの設定を開く。

「あぁ、出力先、変わってるね」

「え?」

「昨日、別モニターに繋いだりした?」

「あ、うん、使った」

私が答えるか答えないかのうちに、迅和くんはキーボードを叩く。
軽快な音をしばらく鳴らしたあと、表示オプションが出た。

「複製にするね」

カチ、という音のあと、一瞬の沈黙。


次の瞬間、スクリーンに資料がぱっと映った。
青が消え、私の作ったスライドが、きれいに広がる。

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