月が青く染まる夜に
私は作業員の皆や関係者の前に立ち、なるべく声を張るようにして話をした。

「工程変更に伴い、立入制限エリアを東側に拡張することになりました!クレーン作業は協力会社到着後に再開します!午前中は外観点検を優先していただくよう、お願いします!」

聞こえたかな…と不安になっていたものの、作業員たちが一斉にうなずく。
ホッとして胸を撫で下ろした。
ヘルメット越しの視線が、私に集まる。

現場のなにが嫌って、こういう時に自分に注目されるのがとてつもなく嫌である。
なんにもできない、技術者でもない素人同然の自分が、プロたちの前で話さなくてはならないのがつらい。

その輪の少し後ろにいる、同じ会社の面々がいることが救いである。


ミーティングが終わり、散開する人波の中で、高玉課長が迅和くんを連れてこちらへ向かってきた。

「助かったー!紗菜ちゃん、ありがとう。今日、君がいなかったら現場が止まってたよ」

風の音に紛れそうな声だったけれど、はっきり届いた。
褒めてもらえたのは嬉しいけれど、私がやったのはあくまで事務作業であり、道筋を作っただけ。
マニュアルに沿った資料作成だ。

私はヘルメットの内側で、そっと息を吸った。

「…皆さんの方が大変ですから」

「そんなことないですよ」

迅和くんが即座に返してきたので、驚いて見上げる。

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