月が青く染まる夜に
意気込んで宣言したところへ、さっき出ていった他部署の男性陣が戻ってきた。なんでこう、男の人ってこんなにも食べるのが早いのか。
運がいいのか悪いのか、“あのキーホルダーの持ち主”迅和くんもそこにいた。
明らかに私の「大盛り食べます」宣言を聞いていたらしく、目が合った。
その視線は驚くほどに一瞬で逸らされた。
それより先に目の前に爽やかな顔立ちの、うちの会社唯一のイケメンと謳われている営業課の笹原さんが「大盛り?」と声をかけてきた。
「紗菜さんが大盛り?意外だな」
「き、聞かなかったことにしてもらえます…?」
「今みんな聞いちゃったよ」
穴があったら入りたい。入りたすぎる。
ちらりと見た迅和くんは、興味がないのか早々に背中を向けて自身のデスクに座っていた。
足元には信号機のキーホルダー。
座った時の振動でじゃらり、と音が鳴るのが聞こえた。
「笹原くんに絡まれるなんて、ラッキーデーだね〜」
社員食堂へ向かうエレベーターの中で真奈美さんに小突かれたものの、私の思いはまったく違うところにあった。
────聞かれたよね、迅和くんに。
モノクロだった背景の一部でしかなかった彼を、生まれて初めて意識したような気がした。
運がいいのか悪いのか、“あのキーホルダーの持ち主”迅和くんもそこにいた。
明らかに私の「大盛り食べます」宣言を聞いていたらしく、目が合った。
その視線は驚くほどに一瞬で逸らされた。
それより先に目の前に爽やかな顔立ちの、うちの会社唯一のイケメンと謳われている営業課の笹原さんが「大盛り?」と声をかけてきた。
「紗菜さんが大盛り?意外だな」
「き、聞かなかったことにしてもらえます…?」
「今みんな聞いちゃったよ」
穴があったら入りたい。入りたすぎる。
ちらりと見た迅和くんは、興味がないのか早々に背中を向けて自身のデスクに座っていた。
足元には信号機のキーホルダー。
座った時の振動でじゃらり、と音が鳴るのが聞こえた。
「笹原くんに絡まれるなんて、ラッキーデーだね〜」
社員食堂へ向かうエレベーターの中で真奈美さんに小突かれたものの、私の思いはまったく違うところにあった。
────聞かれたよね、迅和くんに。
モノクロだった背景の一部でしかなかった彼を、生まれて初めて意識したような気がした。