2Kの君~終電帰りの限界OL、2Kの扉を開けたら異世界騎士の部屋でした
 薪が時折爆ぜるあちらの部屋に居ると、尋常では無い出来事に巻き込まれたと実感できるのだが、2Kの自室に戻ると、途端に現実へ引き戻される。

 たった一歩で、現と夢を行き来する。
 
 すらりとした長躯の美人。
 男性を指して美人と言うのに違和感を感じさせない美。
 わりと癖の無い亜麻色の髪は背中の中ほどまである。

 髪紐は無いかと聞かれたため、シュシュを渡しておいた。
 黒地にピンク色のドット。ポリエステル100%である。

 三色ボールペンに感嘆し、ノートの紙の感触に驚愕し、勿体無いとつぶやきながら、今は玄関口に座り込んで、扉に掘り込まれている細やかな紋様を写し取っている。

 真剣にその模様を見る瞳は青灰。
 胡坐の形に組まれた足は長く、長衣の襞はだいぶ崩れ皺がよってしまった。

 血統書付きのどこぞの猫のようなお坊ちゃまに、着替えを求められたのだが、百八十センチメートルを優に越す男に合うような衣服は生憎持ち合わせていない。

 凛子が寝巻きとして使用していたTシャツが、彼女の持つもっとも大きなサイズの衣服で、シェイルは不満げにしながらも、仕方なしにそれを身に着けている。

 つまり今は、ぴっちりとした黒い綿のTシャツとロングスカートのようにして身に着けている長衣と云う格好。
 違和感たっぷりな組み合わせを思い出して、凛子は少しだけ笑った。

 彫りの深い顔に引き締まった唇。
 瞳の色は青灰色。

 美醜の判断をする機会が、一般よりも多い彼女の目から見てもそれらは、美しい配色、美しい比率をもって、その人を構成している。

 ボールペンの構造について質問を繰り返し、シュシュで髪を束ね、Tシャツのタグの意味を問う。と書くと頭の螺子が飛んでしまった人物を思い浮かべてしまうが、彼は異邦人。

 否、異邦人どころではない。世界の理が違うといっていた。

 異世界の存在なのかもしれない。
 宇宙人云々、平行世界云々は数多の人間によって議論されてきたが、その存在証明となりえるかもしれない物がそこに在る。

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