扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
 王宮の食堂で一人昼食を摂っていると、横の方から不意に近づいてくる気配があり、凛子は顔を上げた。

 基本的に王宮内に勤務している人間がいる間が、食堂の稼働時間だ。
 執政庁も学術庁も騎士団も、早朝から深夜を過ぎて明け方と、ほぼ丸一日誰かしらが業務にあたっている。その為、食堂も二十四時間営業となっており、どの時間に来ても、調理人は言わずもがな必ず誰かが居る。

 ただ、隙間の時間というのは必ずあって、正午頃は大混雑するものの、そのピーク時間を過ぎると、人も疎らになる。凛子が昼休憩と称した休憩をとれたのは午後も大きく過ぎて、二の刻近くだったため、席を探さずとも座れる状態だった。

 プレートに温野菜と丸パンとつくねのような焼き物の串を二本選び、ついでにデザート用にヨーグルトの小皿も載せる。王宮の中庭が見える窓際の席に一人座った。出入口近くには懐かしの官吏服を身に着けた何人かが見え、凛子の視界の斜め前方には軍服を纏った集団が見える。徽章代わりにもなる縁取りのラインが灰色をしている事から、まだ位が低い一団である。

 パンを頬張りながら、見慣れた食堂の光景をなんとなく眺めていたのだが、ふと視界の端に見えていた群青色が動いた。釣られるように横に顔を向けると、手にトレーを抱えて満面の笑みを浮かべている金髪翠眼の美青年と、苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべた銀髪眼鏡の青年がそこに立っている。

 つい先ほど別れたばかりのローワン。
 そして彼の前に立って居るのはローワンの上官でありシェイルの副官である、ウェントワースだった。
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