2Kの君~終電帰りの限界OL、2Kの扉を開けたら異世界騎士の部屋でした
「最高、か」
「シャールは将来何になりたいの? なんか夢とかあるでしょ?」
「夢……考えた事もないな」
「無いの? ああ、わたしも学生時代は遊ぶのに夢中で就活はじめてからだっけ……うーん、そっちはどんな職業あるんだろう……賢者がいるなら学者とか? あと魔法魔法。魔術師とか?」
「魔術師ならすでになっているともいえる。俺は魔術も使うから」
思いつくまま適当に言葉を重ねていた凛子は、シェイルの返事に思わず反応する。
「使えるの? やってみて!」
「試したが、此処には殆ど要素がないらしい」
「わーん残念」
「そんな落ち込むほど魅力的な物か?」
「だって、さっぱり検討つかないんだもん。あの扉の模様に、変な仕掛けが施されててさ。で、シャールはそれを解析?して、どういう作用を起こすかが判るんでしょ?」
「俺からすれば、リィンのよく弄っている時を刻む四角い板切れが便利そうでひとつ欲しい。簡易照明にもなるし」
スマートフォンを指し示され、凛子はなんとなく納得した。
「隣の芝生は青く見える、ね。本当に異文化だわ。携帯を板切れ。そういや日本語話せているのにビールは知らなかったしな」
「びーる。リィンの好んでいる水だな。麦の酒」
「……もしかしたらシャールの世界に無いものは、通じないのかもねえ」
聞き返された単語を頭の中で並べてみる。
にーけー、せくはら、かがく、にほんご。凛子という名前も無いのだろう。
「本当に不思議だね。面白いけど」
不意に笑いかけられた当人は、一刹那だけ声を詰まらせる。
「……こんな事が無ければ出会わなかっただろうな――」
「ん?」
「独り言だ」
シェイルは何かを誤魔化すように、無防備な格好で首を傾げる凛子の頭を、掻き雑ぜた。