2Kの君~終電帰りの限界OL、2Kの扉を開けたら異世界騎士の部屋でした
◇
不意に揺れた空気に、凛子は誘われるように覚醒した。
時刻を確認すると、午前三時。
暖炉の前でだらだらと話しているうちに、いつの間にか眠ってしまったようだ。
薄闇の室内は凛子の部屋の物で、客用布団の中に、自分がしっかりと丸まっているのを理解する。
シェイルが律儀にも運んでくれたのだろう。
その運んでくれた主が、凛子が日頃使用しているベッドで、寝返りを打つ。
こちらを向いたシェイルの寝顔が、なんとなく苦しげに見え、凛子はそっと起き上がった。
引き結ばれた唇。眉根はぎゅっと寄せられている。
環境の多大なる変化に体がついていかず、熱でもだしたかもしれない。
なんとなく、自分の喉も痛いような気がする。
その額に手を伸ばしたのは、無意識だった。
が、シェイルの肌に指先が触れたかと思った瞬間。
衝撃を受ける。何が起こったのか理解出来ず、すぐそこにある青灰の瞳をぼんやりと見つめた。
「……リィン」
ややして落とされた声に、止まっていた息を吐き出した。
「びっくり、した」
シェイルによって、引き摺り上げられた体は妙な体制で、それを自覚した途端遅れて痛みがやってきた。
「いたたた」
「……悪い」
覆いかぶさるようになっていたシェイルがゆっくりと体をずらすと、空間が生まれ、凛子は自分の背中の下敷きになっていた手を動かす。
「大丈夫?」
心配そうに見やると、小さく頷く。
すっかり起き上がったシェイルは片手で目を覆い、浅く呼吸を繰り返している。
「ほんとに? 体調悪かったらいいなよね。一応薬とかあるよ?」
顔色は伺えないが、具合は相当悪そうだ。
よくよく考えると何の助けにもならないのだが、凛子はシェイルの背中をゆっくりと摩る。
少年では無いがまだ十八歳。
人生経験からいえば、凛子の方が長い。
奇妙な状況下に陥っているのはお互い様だが、ライフラインが断絶しているとはいえ、こうやって目を覚ましても、まったく見知らぬ物に囲まれているわけではなく、凛子の日常を証明する切片はそこかしこに在る。
「夢を……」
双眸を覆っていた手をシェイルが下ろす。
「見ていた」
凛子は言葉の続きを待つ。
「此処は、平和すぎて……ああ、だからか」
立てた肩膝に肘をつくと、掌に自身の額を納めるように押し付ける。
「誰にも知られぬ――流石に、知りようが無い。探知も無理だ。想像を超えている。くくく」
呟きながら、肩を揺すって笑い始める。
声をかけるうタイミングを失い、なんとなく見ていた男の掌が、ぐっと握りこまれ「――くそ」とマットレスに叩きつけられた。
振動が伝わる。
不意に揺れた空気に、凛子は誘われるように覚醒した。
時刻を確認すると、午前三時。
暖炉の前でだらだらと話しているうちに、いつの間にか眠ってしまったようだ。
薄闇の室内は凛子の部屋の物で、客用布団の中に、自分がしっかりと丸まっているのを理解する。
シェイルが律儀にも運んでくれたのだろう。
その運んでくれた主が、凛子が日頃使用しているベッドで、寝返りを打つ。
こちらを向いたシェイルの寝顔が、なんとなく苦しげに見え、凛子はそっと起き上がった。
引き結ばれた唇。眉根はぎゅっと寄せられている。
環境の多大なる変化に体がついていかず、熱でもだしたかもしれない。
なんとなく、自分の喉も痛いような気がする。
その額に手を伸ばしたのは、無意識だった。
が、シェイルの肌に指先が触れたかと思った瞬間。
衝撃を受ける。何が起こったのか理解出来ず、すぐそこにある青灰の瞳をぼんやりと見つめた。
「……リィン」
ややして落とされた声に、止まっていた息を吐き出した。
「びっくり、した」
シェイルによって、引き摺り上げられた体は妙な体制で、それを自覚した途端遅れて痛みがやってきた。
「いたたた」
「……悪い」
覆いかぶさるようになっていたシェイルがゆっくりと体をずらすと、空間が生まれ、凛子は自分の背中の下敷きになっていた手を動かす。
「大丈夫?」
心配そうに見やると、小さく頷く。
すっかり起き上がったシェイルは片手で目を覆い、浅く呼吸を繰り返している。
「ほんとに? 体調悪かったらいいなよね。一応薬とかあるよ?」
顔色は伺えないが、具合は相当悪そうだ。
よくよく考えると何の助けにもならないのだが、凛子はシェイルの背中をゆっくりと摩る。
少年では無いがまだ十八歳。
人生経験からいえば、凛子の方が長い。
奇妙な状況下に陥っているのはお互い様だが、ライフラインが断絶しているとはいえ、こうやって目を覚ましても、まったく見知らぬ物に囲まれているわけではなく、凛子の日常を証明する切片はそこかしこに在る。
「夢を……」
双眸を覆っていた手をシェイルが下ろす。
「見ていた」
凛子は言葉の続きを待つ。
「此処は、平和すぎて……ああ、だからか」
立てた肩膝に肘をつくと、掌に自身の額を納めるように押し付ける。
「誰にも知られぬ――流石に、知りようが無い。探知も無理だ。想像を超えている。くくく」
呟きながら、肩を揺すって笑い始める。
声をかけるうタイミングを失い、なんとなく見ていた男の掌が、ぐっと握りこまれ「――くそ」とマットレスに叩きつけられた。
振動が伝わる。