扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
蒼月亭の扉を開けると、甘い香りが鼻をついた。
香料と酒と、人の体温が混ざり合った、独特の匂い。
店内は薄暗く、古めかしい照明が柔らかな光を落としている。天井からは深紅の布が垂れ下がり、壁際には金色の燭台が並んでいた。奥の方からは、くぐもった笑い声と、低い音楽が漂ってくる。床には深い色合いの絨毯が敷かれ、足音を吸い込んでいた。
エントランスホールの左右には、ゆったりとしたソファが配置されている。そこには数人の客と、色鮮やかな衣装を纏った女性が寄り添っていた。彼女は客の言葉に微笑みかけ、時折グラスを傾けている。その様子は、まるで洗練された舞台を見ているようだった。
「いらっしゃいませ」
艶やかな声が響く。
入口には、深紅のドレスを纏った女性が立っていた。年の頃は三十代半ば位だろうか。豊かな黒髪を編み上げ、濃紺の瞳が妖艶に細められている。
「まあ、シェイル様、お待ちしておりました」
女性——リゼットは、流れるような動作でシェイルに近づく。
「今回のおとないは、間が明かなくてとても嬉しいですわ」
その声音は、蜜のように甘い。
凛子は、店内の空気感にもリゼット本人にも圧倒され、思わず一歩後ろに下がる。
視界の端では、別の女性が階段を上がっていく姿が見えた。その後ろ姿を追う男性客の表情には、期待と欲望が入り混じっている。凛子は思わず視線を逸らした。
「リゼット。こちらは俺の秘書官だ。リィン・カミーヤ」
シェイルの紹介に、リゼットは、はじめて気が付いたといった表情を浮かべ、凛子に視線を向けた。
「まあ……随分とお若い」
その瞳が、値踏みするように凛子を見つめる。
「は、初めまして。リィン・カミーヤと申します」
凛子は慌てて一礼する。
「ふふ、可愛らしい方ですこと。シェイル様、好みが変わったのかしら」
「仕事の話で、来ている」
シェイルが冷たく遮る。
「ええ、存じ上げております。お二方こちらへ」
香料と酒と、人の体温が混ざり合った、独特の匂い。
店内は薄暗く、古めかしい照明が柔らかな光を落としている。天井からは深紅の布が垂れ下がり、壁際には金色の燭台が並んでいた。奥の方からは、くぐもった笑い声と、低い音楽が漂ってくる。床には深い色合いの絨毯が敷かれ、足音を吸い込んでいた。
エントランスホールの左右には、ゆったりとしたソファが配置されている。そこには数人の客と、色鮮やかな衣装を纏った女性が寄り添っていた。彼女は客の言葉に微笑みかけ、時折グラスを傾けている。その様子は、まるで洗練された舞台を見ているようだった。
「いらっしゃいませ」
艶やかな声が響く。
入口には、深紅のドレスを纏った女性が立っていた。年の頃は三十代半ば位だろうか。豊かな黒髪を編み上げ、濃紺の瞳が妖艶に細められている。
「まあ、シェイル様、お待ちしておりました」
女性——リゼットは、流れるような動作でシェイルに近づく。
「今回のおとないは、間が明かなくてとても嬉しいですわ」
その声音は、蜜のように甘い。
凛子は、店内の空気感にもリゼット本人にも圧倒され、思わず一歩後ろに下がる。
視界の端では、別の女性が階段を上がっていく姿が見えた。その後ろ姿を追う男性客の表情には、期待と欲望が入り混じっている。凛子は思わず視線を逸らした。
「リゼット。こちらは俺の秘書官だ。リィン・カミーヤ」
シェイルの紹介に、リゼットは、はじめて気が付いたといった表情を浮かべ、凛子に視線を向けた。
「まあ……随分とお若い」
その瞳が、値踏みするように凛子を見つめる。
「は、初めまして。リィン・カミーヤと申します」
凛子は慌てて一礼する。
「ふふ、可愛らしい方ですこと。シェイル様、好みが変わったのかしら」
「仕事の話で、来ている」
シェイルが冷たく遮る。
「ええ、存じ上げております。お二方こちらへ」