扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
 翌朝、凛子は少し目を腫らしたまま執務室に向かった。
 泣いたわけでは無いのに、むくみが取れない。完全に寝不足の顔だ。
 冷水で何度も顔を洗ったが、誤魔化せなかった。

「おはようございます」

 扉を開けると、シェイルはいつものように机に向かっていた。
 その横に、ローワンが既に控えている。

「配置の修正は?」

「あ、はい。昨夜のうちに」

 凛子は書類を差し出す。
 シェイルはそれに目を通し、小さく頷く。

「よし。これでいい。ローワン、お前から三名に説明しろ」

「承知しました」

 ローワンは書類を受け取ると、凛子を一瞥する。
 その視線は、相変わらず冷たかった。

「リィン殿、少々お疲れのようですね」

「そうかな?」

「目の下に隈がくっきりと。秘書官の仕事は、体調管理も含まれますよ。自己管理ができないようでは、困ります」

 嫌味たっぷりの言葉に、凛子は唇を噛む。

「気をつけます」

「ローワン」

 シェイルの低い声が響く。

「余計な口出しは不要だ。さっさと行け」

「……失礼しました」

 ローワンは一礼して、部屋を出ていった。
 凛子とシェイル、二人だけが残される。

「今日は、ラストゥーリャの所に行ってこい」

 凛子は顔を上げる。

「トゥーリャさんの所に?」

「ああ。封印の地に関する資料を借りてこい。それと——」

 シェイルは凛子を見つめる。

「少し、休んでこい」

「え?」

「顔色が悪い。ラストゥーリャの所なら、お前も落ち着けるだろう」

 その言葉に、凛子は目を見開く。

「仕事に支障が出ては困るだけだ」

 そう言い放って、視線は既に書類に向かっている。
 凛子は小さく頷くと、部屋を後にした。

 シェイルは、自分のことを見ていてくれる。

 というか、彼の掌握している部下全員をしっかり見ている。

 冷たい態度の裏に、優しさがあるからこそ、大規模な部隊から信頼を得、こうして率いることが出来るのだろう。記録上に見られる、任務の遂行の確実さは群を抜いているし、負傷敗退といったネガティブな記録はほとんど見られなかった。

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