扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
 執務室に駆け込むと、シェイルはまだ仕事をしていた。

「カミーヤ、どうした」

「報告があります!」

 凛子は息を切らしながら、リゼットから聞いた情報を伝える。
 シェイルの表情が険しくなる。

「今夜、か」

「はい」

「ウェントワースとローワンを呼べ。ルーファとエルネストはまだ蒼月亭か?」

「ルーファさんは蒼月亭に残っていて、エルネストさんは一緒に戻りました」

 半刻経たずして執務室には主要メンバーが集まっていた。

「明日再び不審な男が、蒼月亭に現れる可能性が高い」

「罠を張りますか?」

 ウェントワースの問いに、シェイルがちらりと凛子を見ながら答えた。

「ああ。だが、相手も警戒しているはずだ。店内に三名、周辺に五名配置する。それと――カミーヤはリゼットと共に。お前が店にいれば、犯人は近づいてくるだろう」

「でも、危険では――」

 表情を険しくさせたウェントワースにシェイルが即答する。

「無論、俺も行く」

「え! 閣下が直接ですか?」

 ローワンが驚きを声に乗せた。

「ああ、出発は八の刻だ。準備しろ」


 凛子は自室で軍服を着替えていた。
 手が震える。
 もしかしたら、犯人と対峙するかもしれない。
 
 扉がノックされ誰何の声と共にカトレアが顔を覗かせた。

「リィン、これを持っていけ」

 と、掌に収まるサイズの短剣を差し出された。

「え、でも私……」

「護身用だ。使い方は教えたとおりだ」

 凛子の腰に短剣を差しながら、言い聞かせるように言葉を続ける

「いいか、もし危険な状況になったら――」

「顎、ですよね」

 凛子が先に答えると、カトレアは笑った。

「よく覚えていたな」

「顎、狙えるかな……」

「お前より背の高い相手なら、持っている荷物を顔に当てるだけでもいい。出来れば顎か鼻。背を向けたら相手の思う壺だぞ。まさか向かってくるとは、という意外性だけでも」

「怖すぎる……」

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