扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
◇◇◇

 ゼリアス山脈。
 幕舎の外、吹雪が布を容赦なく叩きつけていた。
 シェイルは伝令から報告を受けていた。

「カミーヤが……攫われた?」

 シェイルの声が、低く響く。

「はい。昨夜」
「犯人は?」
「不明です。ただ、魔術の痕跡が無いことから――」
「計画的な犯行、か。娼館の女将も一緒だと?」
「不明です。そして――」

 ウェントワースが伝令が続きを引き受けて耳打ちする。

「……ミアリエル様が……どうやら同じ時刻に、王都へお忍びに出られており」

 シェイルの目が鋭くなる。

「あのお転婆娘は、何をやっているんだこんな時に……」

 思わず脱力してしまいそうな身体を叱咤するが、ついつい額に手をあててしまう。

「叡智の塔主のところの補佐官殿が、発見? 捕捉しております」

 シェイルは溜息をつきつつ宙を胡乱に見やった。

 ――封印の地まで、あと三日。
 今撤退すれば、この任務は失敗に終わる。
 それに、犯人の真の目的が封印を解くことなら。
 
 シェイルは天を仰ぐ。
 雪が、降り始めている。

「我々は……進軍を続けるしかない。今撤退すれば、敵の思う壺。封印の地を確認する。それが優先だ。そろそろ出立するウェントワース」

「了解しました」

 ウェントワースは敬礼する。
 だが、その目には心配の色が浮かんでいた。
 カトレアも、複雑な表情をしている。
 シェイルは雪の中を見つめる。

 カミーヤ。ミアリエル。

 なんの因果か、どうも自分の周りには厄介ごとばかり回って来る。

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