扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
第六章

彼女と彼の結末

 なんとも後味の悪い結末を迎えた事件から、三ヶ月が過ぎた。

 新年の鐘が、凛と澄んだ冬空に鳴り響く。
 王都アゼリアスは、薄く雪を纏っていた。
 人々の祝福の声と、祝いに飾り立てられた花々に彩られ、今日、ひとりの姫君が成人を迎える。

 ミアリエルの部屋付き侍女であるエマウは、式典の控え室で主の裾を整えていた。

 薄桃の礼服に、地を象徴する翡翠の宝飾。
 いつも天真爛漫に笑っていた少女は、欲目を差し引いても、どこか凛とした横顔になっている。

「……似合ってます、ミアリエル殿下」

「ふふ、ありがとう。今日からは正式に王室議会付き顧問官補佐よ」

 声には誇りと、ほんの少しの不安。

「私も、もっと役に立ちたいの。お兄様たちみたいに、国を守る盾とか……そういう存在に」

「殿下は殿下の在り方で、国を支えておられますよ。軍人になるよりずっと、強く」

 ミアリエルは頬を膨らませた。

「エマウはそうやって、いつもわたしを子ども扱いするんだから」

「だって――可愛いのですから」

 むむ、と言いながらも、くすりと笑う姫。
 成人を迎えたばかりの少女に、無理な背伸びはしてほしくない。
 どうかこのまま健やかに。

 式典の扉が開く。
 光の渦が彼女を誘い、ミアリエルは振り向いて、いつものように軽く手を振った。

「見ててね、エマウ」

「もちろんです」

 扉が閉まり、祝福の歓声が響き渡る。

 ――この平穏が、ずっと続きますように。
 エマウは、ただ静かにそう祈った。

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