扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
◇◇◇

「ミアリエル様、そう肩を落とさないでください」

 ミアリエルの身に付けていた儀礼服を片付けながら、エマウが言う。

「姫様は戦場に立つお立場ではありません。あくまで――この国の象徴であられます」

 それは優しさか、檻か。

「象徴だからこそ……みんな傷つくのを見過ごせないのよ」

 ミアリエルは立ち上がる。まだ震える足で、凛と背筋を伸ばして。

「許可できない」

 監視もしくは説教しに戻ってきたであろう、兄の声は一閃の刃。

「今後、お前が、戻らぬ可能性のある場所へ行ってはならない」

 ミアリエルは唇を噛む。

 何もできない。王女であることが、こんなにも無力だなんて。

「……せめて、祈っていろ。それがお前の務めだ」

 シェイルのその一言に――胸の奥で何かが崩れた。
 祈るだけ?
 自分の愛する国に危険が迫っていても?

 そして、少女の瞳に燃え上がった炎に、気づいた者はまだいない。
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