2Kの君~終電帰りの限界OL、2Kの扉を開けたら異世界騎士の部屋でした
「で、ラエル兄上は結局何処に居たの?」
「私が無人島に居たのは本当だ。赤ん坊ほどもある大きな鳥の巣に落ちてしまったらしく、甲斐甲斐しく色々運んできてくれるのだが、役立ちそうなものは皆無。空腹に耐えかねて一瞬焼き鳥にしてしまおうかと考えたのだが、翌日その鳥が卵を産んでな……殺してしまうのは可哀想じゃないか。生まれてくる子供に悪気は無いのだから。仕方なしに飲まず食わずのまま、鳥と一緒に卵を温めていたよ。嗚呼、実に貴重な経験をさせて貰った」
にっこりと微笑む第一王子は、叡智の塔主へ視線を流す。
「兄上の懐の深さに、鳥も感銘して空から落ちてしまうだろうね」
空から落ちるのは、不吉である。
「そんなディエルは何処に飛ばされたんだ?」
「残念ながら、僕の方も極寒の地に居たのは本当なんだ。気がついたら何もかもが氷で出来ている室で。寝台も氷なら、卓も椅子も氷。器や杯までも氷で出来ていてね。完全に氷りついた毛髪は、武器にもなるという事を始めて知ったよ。相棒は毛深い男でね。ちょっと貞操の危機にあったりもして、ある意味冒険だったかな。親切な誰かのおかげで僕もまた、模索していた将来の道を切り開けたけれど」
第一王子とそっくりな顔つきで、第三王子もまた叡智の塔主へ微笑みかける。
「ディエルの美しさは、やはり同性の心までも掴むか。聖王庁は危険じゃないのか? 男の花園と揶揄されているらしいぞ」
それは、知らなかった。
「ま……大丈夫だよ兄上。僕は男色家じゃないし、蔦薔薇の麗しの君、をこうやって見ても惚けたりしないさ」
蔦薔薇の麗しの君は、少女とよく間違えられていた少年時代のラストゥーリャの渾名である。暗黒の歴史である。