2Kの君~終電帰りの限界OL、2Kの扉を開けたら異世界騎士の部屋でした
 やっとかよ、と内心で毒づきつつ、次の瞬間には違和感を感じ、凛子は勢いよく起き上がった。

 妙な、気配。

 廊下を照らす光はこの部屋のものではなく、玄関の向こうから室内へと漏れてきている。

 そして、何かの影。
 
 凛子は息を殺しクッションを抱きかかえ、目を凝らす。

 強盗か、それとも。

 数日前ニュースで流れた、集合住宅における性犯罪が脳裏を過ぎ、忽ちのうちに嫌な汗が浮かぶ。
 玄関付近で足を止めていた影がドアが閉まるのと同時に動き出す。
 探るようにとゆっくり歩みを進める影に、凛子は金縛りにあってしまったかのように固まる体を震わせる。

 そして、影が、廊下とこのリビングの境界を踏んだ瞬間、勇気を振り絞って飲みかけの缶ビールを投げつけた。
 が、すぐさま体が引き倒され瞬く間のうちに、腕をねじり上げられる。

 何が起こったのか一瞬理解できなかった彼女の視界いっぱいに飛び込んできたのは、侵入者――美麗な顔立ちをした男だった。

「とんだ侵入者だな。イズラルの手の者か?」

「なっ!? なにすんのっ!?」

「――こういった場面で……何をするのか、と問われたのは初めてだ」

 酷薄そうに笑った男が、凛子の顔の横に何かを突き立てる。

 視界の端が捕らえた炎のあかりに反射して揺れる銀色に、背筋が凍りつく。

「動くな」

 低い男の声に、注意は引き戻され、凛子はえも知らぬ恐怖に身を震わせた。

「さて……」

 額づくように凛子に顔を寄せた男の亜麻色の髪が落ちる。
 薄い笑みを浮かべていた唇が開き、それからどういった理由か中途半端な形で固まった。

 青灰色に彩られた瞳は数度瞬きを繰り返し、凛子から視線を外す。
 そして僅かに身を起こした男は、自身に問いかけるでもなく、言葉を紡ぐ。

「ここは……どこだ」

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