扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
 とろとろと進む荷馬車から見る光景は、牧歌的だ。
 白銀に覆われていた大地は、所々で融けだした雪の下から、新緑の緑を覗かせている。

 白と緑、それから空の青が織り成す色彩は、とても目に優しく穏やかなものだ。春が近づいているのかもしれない。荷馬車を操る少年に「クァルツが見えてきた!」と声を掛けられ、凛子は目を瞬かせる。

 クァルツ。とは街のようだ。

 黒茶色の煉瓦を積み上げられた外壁。楕円に大きくうがたれた外門は開放されており、凛子たちが乗っているような荷馬車が出入りしている。門の右側に、群青色をした軍服のような制服を着た男たちが数人立っているが、特に何かを検閲している様子も無く、荷馬車はあっさりと街の中へと入る。

 茶色の濃淡をした石で作り上げられた街並みは、独特な雰囲気を漂わせていた。天気が良いことも相まって、行きかう人々の数はかなり多い。

 もちろん、凛子が数回訪れた村など、たとえば今通り過ぎた横長の建築物の中にすっぽりと入ってしまいそうだ。ところどころに、外門近くで見た制服を纏っている青年たちが居たり、揃いの灰色をした外套を身に纏っている少年少女らが歓談していたり、若い男女が連れ立って歩いていたり。

 華やぎの中に、落ち着いた印象を覚えるのは、恐らく街を構成している色合いの所為だろう。

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