扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
◇◇◇
なんの記憶も無い空白の時間を過ごし、凛子が再び目覚めた時、やはりと言って良いのか、先ほどの白い空間に設置されてある寝台の上だった。
胡乱げに頭をふるう。
自分の意思で抗うことの出来ぬ睡眠というのは、まったくもって不愉快だ。
こめかみをもんで身を起こす。
空間はひっそりと静かで、人間が生活している気配が無い。調度品の少ない白い室内は、まるで病室を喚起させる。
いつの間にか着替えさせられたのか、今朝着ていた服――借りた紺色の膝丈ワンピースといつもの黒いコート黒いブーツ――ではなく、踝まであるすとんとした生成りの衣服を身に着けている。足は裸足だ。
暫くの間寝台に腰掛けて足をぶらぶらさせていたが、立ち上がり室内をぺたぺたと歩き始める。
壁から壁まで歩いてみたら凛子の歩幅で凡そ十三歩あった。十三歩掛ける十三歩の正方形の空間。
片側の壁際に寝台。寝台から見て左手に窓。その手前に円卓。窓にかかるカーテンは生成りで金糸の縁取りがされてある。寝台から見て右手に両開きの扉がひとつ。出入り口はそこだけだ。
恐ろしく広いという部屋では無さそうだが、家具らしきものが寝台と円卓しか無いため、居心地が非常に悪い。せめて壁に絵画のひとつでも飾れば良いのにと一人ごちる。室内をうろうろして、扉を開けてみようかと思いつくが、僅かな勇気が出なかった為、反対側の窓辺へ歩み寄る。
部屋は建物の二階にあるらしい。窓は難なく開いたが角部屋なのか左手には何も無く右手に同じ色の壁が続いている。正面の視界は木立に遮られて判然としない。合間から灯りが見え隠れするが、それが何の灯りなのか検討もつかなかった。空は茜色から藍色へと変化していく。
夜が、訪れようとしていた。
なんの記憶も無い空白の時間を過ごし、凛子が再び目覚めた時、やはりと言って良いのか、先ほどの白い空間に設置されてある寝台の上だった。
胡乱げに頭をふるう。
自分の意思で抗うことの出来ぬ睡眠というのは、まったくもって不愉快だ。
こめかみをもんで身を起こす。
空間はひっそりと静かで、人間が生活している気配が無い。調度品の少ない白い室内は、まるで病室を喚起させる。
いつの間にか着替えさせられたのか、今朝着ていた服――借りた紺色の膝丈ワンピースといつもの黒いコート黒いブーツ――ではなく、踝まであるすとんとした生成りの衣服を身に着けている。足は裸足だ。
暫くの間寝台に腰掛けて足をぶらぶらさせていたが、立ち上がり室内をぺたぺたと歩き始める。
壁から壁まで歩いてみたら凛子の歩幅で凡そ十三歩あった。十三歩掛ける十三歩の正方形の空間。
片側の壁際に寝台。寝台から見て左手に窓。その手前に円卓。窓にかかるカーテンは生成りで金糸の縁取りがされてある。寝台から見て右手に両開きの扉がひとつ。出入り口はそこだけだ。
恐ろしく広いという部屋では無さそうだが、家具らしきものが寝台と円卓しか無いため、居心地が非常に悪い。せめて壁に絵画のひとつでも飾れば良いのにと一人ごちる。室内をうろうろして、扉を開けてみようかと思いつくが、僅かな勇気が出なかった為、反対側の窓辺へ歩み寄る。
部屋は建物の二階にあるらしい。窓は難なく開いたが角部屋なのか左手には何も無く右手に同じ色の壁が続いている。正面の視界は木立に遮られて判然としない。合間から灯りが見え隠れするが、それが何の灯りなのか検討もつかなかった。空は茜色から藍色へと変化していく。
夜が、訪れようとしていた。