扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
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 通称、星霜通り。

 週末ごとに露天市の開かれる街の中央広場から、少し東側へ足を伸ばすと、飲み屋が連なう独特の地区が広がっている。日が落ちてから人通りが徐々に増え、軒を連ねる店の営業が終わるのは明け方近くになるという。

 入り組んだ路地は迷路の様でもあり、土地に慣れない者だと、一瞬足を踏み入れるのを躊躇してしまう雰囲気をもつ飲み屋街である。

 が、隠れた名店が多く、観光客や市井の者からお忍びでやってくる貴族まで、老若男女問わず、人の出入りが激しい。もちろん良からぬ企みを持つ者の出入りもある。ひったくりやスリなどの事件はそれなりの件数があがるため、定期的に王都支部の騎士団が巡回をしている。

 凜子が図書院のヒューゴと知り合ったのは、城の食堂でたまたま隣に座り、同じメニューを食べていた事が、立て続けに三度続いたからである。
 
 官吏向けの昼食を提供する食堂のランチメニューはそれなりに種類が多いのだが、三度続けて同じもの選び、隣の席で食べている事に気がついた二人は、お互いに苦笑を漏らし、そこから会話が始まった。どうやら食の趣味が似ているらしい。

 肉も好きだが、どちらかというと魚派。野菜はサラダより火を通してある方が好ましい。穀物ならば断然パン。そして、アルコールに目が無い事までを、理解しあった。

 地方から中央に来ているヒューゴは、もれなく官舎住まいなのだが、どうやら官舎の夕飯は、若干彼の舌には合わないらしい。なので、かなりの頻度で街の食堂を訪れるようになったと言っていた。今では食べ歩きが趣味でもあると。独身公務員の趣味にしては若干地味である。

 そんなヒューゴが、自分と食の好みが似ている凜子なら、絶対に気に入るであろうという店を見つけたという。

 裏手に入るといかがわしい店舗も多少はある地域だが、アゼリアスの台所と言われている場所である星霜通りには、機会さえあれば行ってみたいと前々から思っていた。ラストーリャには口が裂けても頼めないし、エイゼルになら……と思ってはいたのだが、最近の彼は夜の時間も忙しくしているらしく、中々時間が合わなかった。

 ヒューゴからのお誘いは、凜子にとってとても嬉しいものであり、二つ返事で快諾した。
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