扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
◇◇◇

 ――ここに来てした事。
 凛子は、憮然とした表情で行儀悪く椅子に横座りをしていた。

 起床し朝食を摂り放置され、昼食を摂り昼寝をし、夕方湯浴みをし夕食を摂り寝酒が用意される。なんともいえない監禁生活に突入し、早くも四日目である。

 パンを千切っては窓の桟に並べていた彼女に、この閉鎖空間で顔を合わせている時間が一番長い二人の青年が、物言いたげな視線を向けてくるが、凛子は気にもせず、その非生産的な行為を続ける。持っていたパンをすべて崩してしまうと、立ち上がり窓からだいぶ離れたところに椅子を持って移動し、並んでいるパンくずを眺める。

 鳥でもやってこないかと思っていたのだが、可愛らしい訪問者の訪れは一向に無い。

 そう、自分は籠の鳥だ。

 扉外の通路はどこまでもまっすぐに伸びているにも関わらず、歩けども歩けどもまるで魔法のように元の場所へ戻される。

 窓から身を乗り出して確認した建物の外観は、自分の居る部屋が角部屋であること。そして二階であることを示していた。それにも関わらず通路を歩いても階段らしき物にあたる事は無く、気がついたら寝台のある部屋の前に戻っている。

 寝台のある隣の部屋は洗面所と浴室。この階には二部屋しかないのだろうか。
 いや、そんな筈はない。

 ならば、この青年達はいったいどこからこの部屋にやってくるのだ。運ばれてくる料理はいつでも温かい。虜囚である自分が室内から出る事を制限されたり、うろうろ廊下を歩き回ることを制されることがないのは、此処が閉ざされた完璧な空間だからだと、無言の主張をしているように思えた。

 遠くから澄んだ歌声が響いていた。
 天に向かって枝葉を伸ばす木立の合間に見える蒼。
 落ちる木漏れ日の光。
 白の空間は夢のような檻。清潔で穏やかで憂いの色さえ曖昧にする監獄。

 だが、その微温湯のような空気が、一瞬にして変わる。

 白を塗りつぶしてしまう闇色。髪も瞳も身に纏う衣も漆黒の存在。
 胡乱な顔を窓外に向けていた凛子は、その色を視界の端に捕らえ弾かれた様に立ち上がった。
 警戒の色を顕わにする凛子に向かって、黒衣の男は目礼する。

 その異質の入室と同時に、二人の青年達が卓上を片付けていく。
 巨大な一枚板が室内へと運ばれてきた。黒衣の男が指示をし、それは床に置かれた。

 ディエルが顔を覗かせ、エイゼルもまた居た堪れなそうな表情を浮かべ入室してくる。給仕の青年達が入れ替わりに出て行き、扉が閉ざされた。

 三人の男と、唯一の女性である自分。
 想像もしたくない展開が、凛子の脳裏を過ぎる。

 そして、それは唐突に始まった。
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