扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
石畳を打つ物騒な物音に凛子は弾かれたように顔を上げた。
「――――スリだ!!」
男の叫ぶ声がさほど遠くない場所であがる。
「待て!」
「騎士団に通報しろ……!」
夜を裂くような女の悲鳴もする。
何かが壊れて地に落ちる音がそれに重なる。
きゅっと胸を掴まれるような感覚に、凛子は小さく身を竦め、酔い覚め用にと露天で購入した温かいお茶のカップを片手に、ヒューゴの待つ小路へと急いだ。
が、石のベンチで休んでいる筈の男の姿はそこに無かった。
ガチャガチャと金属のぶつかりあう音に、続けて幾つもの靴音。
群青の制服の青年達が通りに新たな彩を落とす。
先程より一層喧騒の波が、通りに広がる。
警邏を主に担当している王都支部の騎士達が駆け付けていた。
騎士団は軍隊でもあるが、安寧の昨今は、いわば警察機構のような役割を担っている事が多い。スリや空き巣といった窃盗事件や、詐欺、失せ物の捜索まで、ともかく何でも。民の平和と安全を護る事が、主たる役割になっているといっても過言ではない。
凛子は途方に暮れて、通りとベンチを交互に見遣る。
素焼きのカップはどんどん温かさを失っていた。
「どっかで、行き倒……、っ、!」
そうひとりごちた刹那、呼吸を強制的に止められる。
「くっ、……!!」
首に絡みつく何かが、彼女の呼吸器官を締め付け、凛子は息苦しさで目を見開く。
その力に抗えないまま、彼女の体は石のベンチの後ろの茂みへ頭を突っ込むように崩れ落ちた。柔らかく無い葉が頬を擦る。巻きつく何かを取り除こうとしているのか、指先が小刻みに揺れ、それからパタリと動きを止めた。
「――――スリだ!!」
男の叫ぶ声がさほど遠くない場所であがる。
「待て!」
「騎士団に通報しろ……!」
夜を裂くような女の悲鳴もする。
何かが壊れて地に落ちる音がそれに重なる。
きゅっと胸を掴まれるような感覚に、凛子は小さく身を竦め、酔い覚め用にと露天で購入した温かいお茶のカップを片手に、ヒューゴの待つ小路へと急いだ。
が、石のベンチで休んでいる筈の男の姿はそこに無かった。
ガチャガチャと金属のぶつかりあう音に、続けて幾つもの靴音。
群青の制服の青年達が通りに新たな彩を落とす。
先程より一層喧騒の波が、通りに広がる。
警邏を主に担当している王都支部の騎士達が駆け付けていた。
騎士団は軍隊でもあるが、安寧の昨今は、いわば警察機構のような役割を担っている事が多い。スリや空き巣といった窃盗事件や、詐欺、失せ物の捜索まで、ともかく何でも。民の平和と安全を護る事が、主たる役割になっているといっても過言ではない。
凛子は途方に暮れて、通りとベンチを交互に見遣る。
素焼きのカップはどんどん温かさを失っていた。
「どっかで、行き倒……、っ、!」
そうひとりごちた刹那、呼吸を強制的に止められる。
「くっ、……!!」
首に絡みつく何かが、彼女の呼吸器官を締め付け、凛子は息苦しさで目を見開く。
その力に抗えないまま、彼女の体は石のベンチの後ろの茂みへ頭を突っ込むように崩れ落ちた。柔らかく無い葉が頬を擦る。巻きつく何かを取り除こうとしているのか、指先が小刻みに揺れ、それからパタリと動きを止めた。