扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
叡智の塔に戻った凛子は、執務室横の小部屋にエイゼルの姿を認めて、祝祭週間期間の勤務体制について改めて確認する。
「いや、休み無し」
「ですよね!」
行程表を一瞥したエイゼルに、凛子も釣られるように視線を落とした。
「宵宮から本霊祭までってトゥーリャさんは大聖堂の方上がっちゃうんだよねえ……エイゼルは王都中央広場の櫓かあ」
「一応、点火は聖王院の神官が受け持つけど、時間管理はこっちの領分だし、離れられない気がする」
「私は本部横の遺失物係だけど……総合受付、案内、迷子は兎も角、警備って軍の受け持ちなんじゃ……やだなあ……軍ってちょっと苦手なんだよね。警備本部は別の場所にすればいいのに」
項垂れる凛子に、エイゼルは複雑な表情を浮かべる。
確かに、凛子にとってはいろいろと折が合わない。
「せめて櫓だったらなー。楽しそうだしなー」
「櫓担当でも飲食は無理だぞ?」
「そりゃ仕事中だから仕方ないけど、見るだけでも楽しそう」
国主導の年中行事に凛子が正式に関わるのは、今回が初めてである。
春も夏も完全に部外者。一体なにが行われているのか、さっぱり知らなかった。何となく日常とは違った空気だなという程度は、流石に感じていたが。
儀式と民衆の為の祭りが同時に開催される祝祭週間のスケジュールは、それこそ時間が細かく刻まれ進行が指定されてある上、同時刻に別の場所で、別の催しが開催されたりもする。
天文院の上級官吏達はどちらかというと儀礼を主に担当しているのだが、トゥーリャ直属という微妙な立場のエイゼルや、その補佐の凛子に至っては、全体的に人員が足りない部署の補填に回されている。所謂、何でも屋。
そして、予想通り、祝祭週間に突入する当日になっても、凛子はお遣いにやられた王宮内を駆けずり回っていた。