扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
 大聖堂の控え広間で談笑していたディエルは、弾かれたように立ち上がった。
 己が織り上げた術への干渉。

「いまのは」

 自然を満たす力が乱れた。

「ええ」

 小さく頷いたディエルは「ああ、でも」と押し戻すようにシェイルの肩に手を置き、続ける。

「シェイルはどうぞここに居てください。ミアリエルが私の結界に力をぶつけたようです。――たぶん問題ありません。ええ全く」

「おい、どこが問題ないんだ」

「――ちょっと様子を見てきます。あの娘は力の制御が下手ですからね。何かの拍子にうっかり力を解放させてしまったんでしょう。仕方の無い娘です」

 珍しく気まずそうな表情を浮かべ、ディエルがそそくさと部屋を出て行く。
 肩を押さえつける力の思いがけない強さに、内心首を捻る。

「……五人ほど付いて来い。残りは分かれて中と外の警護にあたれ」

 暴発に近い形で爆発した力の残滓からは、ディエルが言ったとおり危険な物は感じられない。
 が、万が一という事もある。
 あの娘はなにをやらかしたのだ。とひとりごち、シェイルは大司祭を追う。

 そして庫院に駆けつけたシェイルは、呆れ果てた惨状に思わず溜息を吐いた。
 植物に蹂躙しつくされ半壊となっている建物。
 不自然なほど伸びきった庫院周りの木立――一部は建物一階の壁に突き刺さり、屋根まで抜けていた。 
< 76 / 218 >

この作品をシェア

pagetop