扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
 宵宮明けて。
 寝不足気味な顔をしている者が多い外宮を、すいすい歩いている黒き賢者もまた、その足取りと反比例するよう、顔に疲労を張り付かせていた。

 聖域で起こった大騒動の後始末に奔走され、半刻も横になっていない。

 執務室をあけると、案の定、どんよりとした空気に包まれており、ラストゥーリャの疲労は一段と増した。

 いつも華やいだ印象を無駄に振りまいている大司祭は、珍しくも生真面目な顔つきで腕を組み、窓辺でこちらに背を向けている右将軍は深い懊悩を背負っているようにも見える。
 先日、自分の下僕的立ち位置へ任命した管理官(エイゼル)だけは、相変わらず隅っこの方で居た堪れなそうに立っていた。

「お待たせいたしました」

 彼が席に着くと同時に、溜息がシェイルから落とされた。

「報告を」

「……まず、ミアリエル様による庫院への破壊行為ですが、事故として処理されることになりました。中庭を散歩していたミアリエル様が……傷ついた鳥を発見し治癒を施そうとしたけれど、術の調整に失敗し力を暴走させた、と――」

 シェイルが体を反転させ視線だけで続きを促す。
 ラストゥーリャは手元の書類を捲る。

「よって教会から執政庁へ、建物修繕費などの請求はなされません。あくまでも事故なので」

「軍からの報告書もそれに習おう。……ミアリエルは?」

「ふてくされ――大変悲しんで、反省しておられますよ。大司祭猊下への誠意に答えるべく、今も休み無く筆を動かされております」

「なるほど。甘いな」

「大事にすると……迷い鳥――に対する処置が面倒になりますし――」

< 79 / 218 >

この作品をシェア

pagetop