扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
再び迎えにきたエイゼルもまた、いつもよりきっちりとした格好をしていた。
通じているのか? と内心で思いつつも、凛子はエイゼルを褒め称える。似たような事を恐らくエイゼルも言っているのだろう。演技がかった様子で、左腕をこちらに向かって差し出すので、凛子もつんと胸を逸らしながらそこに右手を添えた。
途端、二人は顔を見合わせ噴出す。
なぜか双方ともに笑いのツボが刺激されたようだった。
肩を揺らしながら、連れ立って歩き始める。こんな格好をしてどこに行くのだろうか。と、興味深げに視界を探っていた凛子だったが、ある意味で予想を裏切られ、肩をがくりと落とす。
部屋を出て最初にエイゼルが案内してくれたのはお手洗いで、次に案内してくれたのは浴室だった。
「ここは外宮の学術庁が集まっている塔群」
壁に沿って建物をぐるりと回っているらしい階段を上がりながらエイゼルが説明する。凛子には九割以上理解できていない。窓から見えるのは、先ほどの部屋から見えた景色と反対側の光景らしい。楕円形の広場に整然と並べられた石畳が、モザイク模様を造りあげているのが見える。その周りをぐるりと囲むように背の高さが違う塔が立ち並び、広場に向かって入り口を開けていた。
ゆったりとした足取りで、七階ほど階段をあがった場所が、目的地だったらしい。
踊り場の先に両開きの扉がある。
誰何を問う声の後、漆黒を纏う人が姿を現す。
大きな執務机を中央に、両側に書架が並ぶ室内の様相は、最初の街で訪れた教会の一室に似ていた。
「その娘を中央に」
凛子は机の前に置かれてあるものを捕らえ、反射的に嫌な顔をした。
紋様の彫りこまれた扉が、床に置かれてある。
きちんとした格好をしたのだから、何か特別な事が行われるのかと予測していたのが、また例の妙な儀式が行われるらしい。雰囲気的に自分に言っているんだろうなと、凛子が自ら進み出て扉の上に立つと、それで良いといった顔で賢者が頷く。
「やあ遅くなった」
いつ現れたのか。
ディエルに左腕を取られる。
そうしてもう一人に、右腕を。