扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました
 礼状を送りたいのだ。という娘に、ラストゥーリャは紙とペンを用意した。

「私こっちの言葉書けないから、トゥーリャさん代筆して下さい」

 用意された物を押し戻す凛子に、エイゼルは顔を引きつらせる。

「俺が代筆する! から」

「勝手に文章付け足さないでね」

 と、凛子は真顔でいい、リラとロサ老人、ニル宛のお礼を組み立てはじめた。
『エイゼルに騙され、見知らぬ場所に飛ばされた』というくだりは、当のエイゼルによって『転送門の事故により』と意訳されたが、凛子は気づかないだろう。 

 執務室の雰囲気は随分変わった。凛子が加わる前までは、どうしても密談の匂いの方が濃かった。自分の机の横で、額をつき合わせるように紙を覗き込んでいる凛子とエイゼルは、気楽そうに会話している。集会所ではないのだが。ラストゥーリャは内心で溜息を落としつつ、何も言わない。

「そういや、手紙ってどうやって送るの?」

 凛子の問いにエイゼルは「俺が持っていくけど?」と答える。

「そうじゃなくて、一般的に。手紙とか贈り物とか、遠い所に住んでいる人にはどうやって送るの?」

「ああ、だいたいは荷運び専用の隊商があるから」

「ふーん。窓口とかあるんだ?」

「大きな街ならあるよ。ロサさんの所とかは村からも離れているから無いけど。そういう人達は近くの街まで受け取りに行く」

「なるほどね」

 ほどなくして、エイゼルが書き上げた書簡を、凛子は満足そうに眺める。
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