彼は魅惑のバレリーノ

“住む世界が違う”

わかってる。
ずっと、わかってた。

彼は世界から注目されるプロのバレエダンサー。
舞台の上で輝く人。

私は……
ただ絵が少し描けるだけの一般人。
生活能力も低くて、美人でもない。

(比べるまでもない)

「一華さん。大丈夫?
衣装見れた?」

「あ、うん。見れた。」

「じゃあまた続き始めるから。
疲れたら帰って平気だからね。」

「わかった。」

そう言いながら、私は柊くんと――
さっき牽制してきた彼女が踊る姿を見た。

手を取り合って、
腰を引き寄せて、
呼吸を合わせて。

プロとして当然の距離。
役として必要な動き。

(……これに嫉妬するのは、おかしい)

そう思うのに。

胸が、痛い。

“住む世界が違う”
その言葉が、踊るたびに突きつけられる。

区切りがついたところで、
私は立ち上がった。

「ごめん、柊くん。私、先帰るね。」

「 大丈夫?疲れた?」

「平気だよ。
さっき見たことを集中してまとめておきたくて。」

「わかった。
じゃあ気をつけて。」

優しい声。
その優しさが、今は少しだけ苦しい。

背を向けた瞬間、
胸の奥がぎゅっと締めつけられた。

(……好きになっちゃ、だめだよね)


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