彼は魅惑のバレリーノ
「あ、ちゃんと待ってる。」

シャワーから出た私を見るなり、
柊くんは嬉しそうに目を細めた。

「ドライヤー、私やるよ!」

そう言ってドライヤーを構えると、

「じゃあお願い。」

素直にソファの前に座る。
濡れた髪が肩に落ちて、
いつもより色っぽく見えてしまう。

(ちょ、近い…)

手が震えるのを誤魔化しながら、
そっと風を当てる。

温かい風が髪を揺らすたび、
柊くんの横顔が静かに整っていく。

「一華さん、もういいよ。」

突然、手首をぐっと掴まれた。

「え? まだ毛先濡れてるよ。」

「もう待てない。」

低く言われた瞬間、
胸の奥が跳ねる。

次の瞬間——
ぐっと腕を引かれて、
そのまま抱き寄せられた。

「え!?」

驚いて声が裏返る。

でも柊くんは、
逃がす気なんてさらさらないみたいに
しっかりと抱きしめてくる。

「だってさ。」

耳元で囁く声が、
さっきよりずっと甘い。

「さっきからずっと我慢してたんだよ。」

心臓が一気に熱くなる。

「……そんな顔で待ってられたら、無理。」

腕の力が少しだけ強くなる。

「一華さんが可愛すぎて、
離したくなくなる。」

その言葉に、
息が止まりそうになる。

「ちょ、ちょっと落ち着いて…!」

「落ち着けるわけないでしょ。」

そう言って、
額がそっと触れ合う距離まで近づく。

視線が絡んで、
逃げられない。
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