彼は魅惑のバレリーノ
「ねぇ。如月さん」

「はい!何でしょうか!」

勢いよく返事をすると、戸神さんは少しだけ目を細めた。

「週に一回、金曜日の19時から21時までならいいよ。
ただし、ポーズをとったりはしないからね。」

「も、もちろんです!
そばで見させていただけるだけで光栄の極みです!」

興奮しすぎて声が大きくなる。
戸神さんはコーヒーを一口飲んで、ふっと眉を上げた。

「…ねぇ。如月さんって何歳?」

「女性に年齢聞くんですか!」

「聞くよ。
知らない相手を部屋にノコノコ入れたくないし。」

もっともな理由に、私は背筋を伸ばした。

「28歳独身です!」

ビシッと手を上げると、戸神さんは呆れたように瞬きをした。

「彼氏は?」

「いません!
あ、もしかして私のことタイプですか?!」

「違うよ。随分と自意識過剰だね。」

「へへ。」

思わず照れ笑いすると、戸神さんは深いため息をついた。

「そこ照れるとこじゃないと思うけど。」

その言い方は冷たいのに、どこか柔らかかった。

コーヒーを置きながら、戸神さんが静かに言った。

「戸神さんは?」

「おれ?」

「もし彼女さんとかいたらまずいじゃないですか!?」

「いない。あと、俺26歳。年下だから、戸神さんじゃなくていいよ。」

「え。じゃあ戸神くん?いや柊くん?」

「何でもどうぞ。」

「わかりました!じゃあ柊くん、よろしくお願いします!」

勢いよく立ち上がり、かばっと頭を下げる。

「ん。よろしく。」

短い返事なのに、その瞳はどこか柔らかかった。
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